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孤高のメス

公開初日なのにけっこう空いていたのでちょっと不安だったけれど、重いテーマをすがすがしく描ききったいい映画だなと思う。リアルな手術シーンは、映像化のたまもの。やっぱり、健康でいられることが第一だ。


医師としての使命と一体化した優しい主人公と、大事な家族を想う人々(ドナー、レシピエント)の感情の表し方がよく対比されていて、印象的だった。「こうなってほしい」という、観る側の心境を裏切ってくれずでよかった。すがすがしさというのは、これにつながっている。


生体肝移植と脳死の関係は、ずいぶん前に話題となったことは記憶しているものの、結局どうなったのか知ることのないままだった。後で調べてみると、

  • この映画の舞台である平成元年(1989年)時点では、何の法制化もされていない
  • 1989年、生体部分肝移植が日本で始めて行われる(→舞台とした手術そのものはおそらくこれが題材)
  • 1997年「臓器の移植に関する法律」施行
  • 2009年 法改正
    • 「本人意思確認ができない場合」「15歳未満」をどう判断するか
    • A案〜E案、A'案までが出てきて、衆+参で長い審議
  • 2010年7月17日(もうすぐ来る)から、以下のようになる
    • 「又同年7月17日からは、本人の臓器提供の意思が不明な場合にも、家族の承諾があれば臓器提供が可能となる。これにより15歳未満の者からの脳死下での臓器提供も可能になる。」
    • 映画でもこのケースのことを描いていると思われる。法改正によって、ドナー拡大、移植手術への障壁が下がり、それに伴い助かる命が増える、というメッセージがこの映画には含まれているのだろう。