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フィッシュストーリー

4つの短編集のうち後ろ2つ「フィッシュストーリー」「ポテチ」がよかった。


「フィッシュストーリー」>映画を観たあとに読み出したので、「このエピソードは映画のあのシーンか」「映画のあの台詞はこんな文脈に入っていたのか」などと双方向に思い出しながら楽しめた。


バンドの一発録りのシーンが忘れられない。文章だけの描写なのに、その場の空気を感じるというか、映画のシーンをいい意味で補ってくれる。曲がキーとなった小説、映像化で変な演出が入ると、一瞬で小説の雰囲気が崩れてしまうように思う。この映画にはそれがなく、緊張感が保たれていてよかった。


「ポテチ」>会話文がひたすら続き、その言葉で主人公の性格を描ききり、読む側もそれに慣れたころに、(言葉の無い)仕草だけを書かれて感動をもらえる。おそらく今の多くの大人がそうであるように、野球観戦で気分が盛り上がった経験があれば、共感できるのでは。


フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)