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「七夕」温故知新

「伝統的七夕と夏の星空を楽しむ」というセミナーに行ってきた。「七夕は7/7だけど、仙台では8/7」「天の川」「織姫と彦星」くらいの知識しかない状態で、そういえばこれまで知らなかった:

  • なぜ7/7なのか
  • なぜ仙台では8/7なのか
  • なぜ七夕を「たなばた」と読むのか

‥というような点について教えてくれたのでなかなかおもしろかった。
独自説という前置きで説明されたものは、すんなり納得できないのもけっこうあったが、そもそも長い歴史を経た伝承ごとには仮説がつきもので、基本的には残ったもの(書物や絵画など)でしか検証できないため、悩むよりは、言われたことに素直に耳を傾ける方が楽しめる。ちなみに最初のそれぞれは以下のような説明だった:

  • ぞろ目が好まれたから
    • 1/7:人日(七草がゆ)、3/3:上巳(桃の節句)、5/5:端午(鯉のぼり)、9/9:重陽(菊の節句)とあわせて五節句とされる
    • 元々は旧暦(太陰太陽暦)で行われたのに、新暦の今でも日付だけは同じで名残が残っている
  • 仙台七夕の歴史(これは後で調べた)もともとは旧暦7/7だったが、昭和初期に「商家の有志達が仙台商人の心意気とばかりに」新暦月遅れで七夕祭りを復活させたのが始まり
  • 織姫 → 機織りを行う女性「棚機女(たなばたつめ)」が禊を行う行事がたまたま近い頃に行われていて、これと結びついたため


この七夕の謂われはてっきり日本発祥かと思っていたら、元々は中国の言い伝えで、古くは春秋戦国時代の書物にもそれらしい記述が残っている。平安や鎌倉時代の短歌に「たなはた」が詠まれ、江戸時代には、七夕の月夜に屋根よりも高く笹を掲げる絵画を北斎などが残しており、しっかりした文化として根付いてきた。明治時代になって、維新政府の新暦採用に影響を受けて、笹は屋上に掲げずに、控えめに軒先に飾るようになったとのことだった。


セミナーの着地点としては、「伝統的七夕」のPRのようだった。旧暦7/7になるべく近くなるよう、天文学の観点から厳密に”定義”した七夕を「伝統的七夕」と定義して、みんなで夜の照明を消して、星空を眺めてみましょう、という運動を進めているそうだ。今年は8/6で、来年は8/24だ。講師は国立天文台所属の天文学者だが、セミナーのほとんどは上記のような伝承文化の紹介だった。Astronomyと言えど、常日頃から惑星や流星、隕石の軌道計算ばかりをしているのではなく、星座名の由来などはいかにも歴史が関わっているし(しかも国ごとに伝わり方が異なる)、こういう人たちは歴史学者でもあるんだな、と偏見を変えることができた。