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always one step forward

IT寄りの日常・IT以外の日常。ランニング。美術展や展示会感想。長文でもなるべく読みやすく構成する練習を兼ねています

2012/9/30 ダンスの創作風景を目の前で鑑賞 - 池田扶美代x山田うん@KAAT

daily

近所の神奈川芸術劇場(KAAT)で当日券が出ていたので観に行った。一言では、来年公演されるコンテンポラリーダンスの「創作風景をスタジオその場で鑑賞」できるという内容。ダンス公演そのものを観たことが無い上に、その創作風景 - リハーサルというよりは、その場で創り上げられるまさに創作のようす - をじっくり観られたので、二重に新鮮だった。

池田扶美代×山田うん 作品創りの一歩をショーイング

何をするのかは事前情報を見てもよくわからなかったが、ご本人たちの言葉↓から、こういう試みそのものが新しい、という点に興味があった。



2人の案が連結して1つのダンスに

  • スタジオは客席から見て横長の長方形型、全面黒の床(板張りに見えたけどリノリウムらしい)、周囲の内装や消火器もぜんぶ黒で渋い雰囲気。音楽でも演劇でもその他でも、何かを創り上げるには集中できそうな空間。ここに150席くらいの客席が組み上げられ、かなり間近で、「ここはこうだよね」などとダンスの動きを合わせる2人のやりとりを聴く形。
  • 僕は「そもそもダンスの創作ってどうやるの」という完全に素人の視点でスタート。2人が静寂の中で別々の動きをする。なんじゃこりゃ、とどう観ればよいのか若干迷う。どうやら試行錯誤で、何か一連の動きを組み上げているようだ
  • そのうち「できた!」と小さい声が上がり、何かが仕上がったようだとわかる。2人が決めた20秒くらいの動きを複数組み合わせて、今回創作に追加するパートにするようだ
  • 例えば池田さんがAとB、山田さんがCとD。2人合わせてABCDやDBCAの順で身体を動かす。2人を見守っているドラマトゥルクなる役割のサラ・ヤンセンさん、どの順がいいかを3人で話して決める


  • すごいと思ったのはここからで、基本的にはその決めた順で繰り返し動くのだけれど、2人のアドリブ(いや、これそのものが創作なのだろうけれど)が混ざるようになる。同じAでも少しだけ相手とタイミングを変えてみたり、静止する時間を長く取ってみたり、C→Dと動くときの互いの立ち位置を変えてみたり(そして次のタイミングでまたぴったりと合わせてみたり)と、骨となる動きにどんどん肉付けされていく感じがおもしろかった。体型や身体の使い方が少しずつ異なる2人だから、同じ舞台で同じ動きをしても、何か個性のようなものが出る
  • 吸収の早さ。例えば、池田さん考案のAの動きを、山田さんもやるのだけれど、最初は「こうだっけ?」とずれたりする。けれど3回目くらいにそれがなくなり、音楽付きで通す頃にはもう完全に自分のダンスになっている。「それがプロってもんですよ」ということなんだろうけれど、目の前でその吸収を見せつけられるとやっぱり違うんだなと思った

音楽も地味にいい

  • チューバ、サックスのプレイヤーが左右に陣取っていた。ダンスに合わせて音を重ねるように演奏する。といっても曲を流すのでなく、極端に言えばホワイトノイズといってもいい効果音。言葉ではとても書き表せないが、「さざ波のような音」「嵐のような音」がチューバやサックスから出てくるイメージ。そこに、パソコンで編集された環境音も加わる
  • チューバを単なるチューバとして使っていなかった。よく知られた、吹いて音を出すのに加えて、ベル(ラッパ)先端の縁をブラシ状のドラムスティックでなでるようにして小さいリズム音を出すとか、ベル先端にかぶせる丸いカバー(何というのか知らない)を床に落として、その音さえもBGMにするとか。もしかしたら即興音楽ではよく使われる方法なのかもしれないけれど、とにかく、チューバが別の楽器に見えるくらいだった

芯の通った言葉

  • 今回のダンスのテーマとして言葉がある、とのこと。かなり以前から2人で「交換単語」をして、300以上の単語のペアができていた。(池田さんの「とげ」に対して山田さんが「とかげ」を返すなど。最後に全部読み上げてくれた)そのうちの1ペアを選んでダンスのテーマにする。今日のダンスのテーマは(来年の新作につながるので)あえて明かされなかった。
  • Q&Aコーナーで語られる2人の言葉もそうだったし、後で読んだ山田さんのブログの文章を見てもそうだけれど、言葉の芯がとてもしっかりしている。なんというか、表現者だけが持っているクリアな文体。感じたことを表現するプロで、使う言葉のロジックもわかりやすい。ダンスを観に行って言葉の刺激を受けるとは予想していなかったけれど、おもしろかった
  • 全然関係ないけれど、池田さんは品のあって愛嬌があって、という感じで、話し方含めて誰かに似ているな、と思ったら、大学の研究室でお世話になった秘書さんだった。一度そう思い始めると、本人が出ているのではとシンクロすることが多く(もちろん別人)、勝手に親しみを感じてしまった