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2013/09/21 山中千尋さんライブ@静岡音楽館AOI

--- 2013/10/12 セットリスト追記

前日9/20の紀尾井ホールは、当日券で行こうと思っていたけど仕事延長で行けず。この日は静岡公演と知り、当日券、2F左バルコニー席(※)が空いていることを電話で確認し、ああこれは行かないとなと昼過ぎのこだまに乗った。期待通りに楽しめた。

※ 2F席+ステージに向かって左側は、ピアノ鍵盤の上を跳ねる手の動きがよく見える、自分にとっては最高の位置

以下、印象が鮮烈なうちにいろいろ:

  • 山中さんの生演奏を聴くのは、昨年2月の日産ギャラリーのJAZZ JAPAN AWARD受賞記念、昨年6月神奈川県民ホールに次いで3回目。アルバム「モルト・カンタービレ」発売後の全国ツアー、著名クラシック曲のアレンジ曲がメイン。‥といっても単なるジャズアレンジに留まらないのがこの人で、今回もどんな"料理"を聴かせてくれるのだろうという期待がいつもある

    モルト・カンタービレ

    モルト・カンタービレ

  • ライブでも映画でも美術鑑賞でも、何も考えず楽しむ時間がほとんどながらも、「払ったお金に見合うものを得られているだろうか」と冷静に振り返る瞬間がその最中にあったりする。しかし、この人の場合は文句なしというか、疑いを挟むことがない。いつも期待に応えてくれて満足感を得られる

  • 変なたとえだけれど、伝説的におもしろい過去のM-1グランプリ優勝漫才(たとえばブラックマヨネーズ、チュートリアル)を今何度見返しても、おもしろくて笑える、ああやっぱり名作は違うな、と思える瞬間と似ている

内容

  • 内容、まあおよそ言葉では表現できないのだけれど、よく知られた速弾きが今回も炸裂という感じ。「この人の演奏中の頭の中、脳波はどうなっているんだろう」「同じ人間とは思えないな」などなど
  • 時おり椅子から体を浮かせる上下のストローク、鍵盤を端から端までほぼすべて使う左右のダイナミクス。16倍速再生かと思える(いや等倍です)指の動き。しかし目の前で演奏しているのは、しなやかな腕の、間違いなく1人の人間であるというシンプルな現実
  • 一方、曲間には、曲タイトルや小さいエピソードを、息切れもなくさらさらと説明してくれる丁寧さがある。そしてゆったりとした曲 − オリジナルの"カンタービレ"やフォーレ"夢のあとに"など − も聴かせてくれる。速球も力があるし、コントロールのいい変化球も持っている現在全盛の田中将大投手みたいだ

  • ベースの中村恭二さんもドラムスのジョン・デイヴィスさんも一流で、デイヴィスさんは時折にこにこしながら楽しそうに叩く様子がありありとしていて、ああ楽しそうにセッションしているなと素人にもわかった。今回一番印象に残ったのはこの点かもしれない

    • 開演前、スタバのカップを手に会場付近を歩くすらっとした外国人がいて、あれっと思ったらやっぱりこの人で、そのときも何かにこにこしていた
  • アドリブの比率がどれくらいなのかは素人にはわからないけれど、前半最後の"Insight Forsight"、後半の"八木節"含め、速くて密度濃く叩きこまれるピアノに2人ともよくついていけるなあ、これがプロってもんか、と感心しきりだった

  • 「"エリーゼのために"、セロニアス・モンク風です、変に聴こえると思うけどへんと思わないでください」たしかにおっしゃる通り。全体の3-5割くらいは聴き慣れた本来のメロディーと音程を外し、外した先はいかにもセロニアス・モンクが弾きそうな"文体"、あと一歩ずれれば不協和音にもなりそうなメロディー。それでいて曲になっているという。こんなアレンジが可能なのかと

ライブ後のホスピタリティ

ジャズのある風景

ジャズのある風景

  • 書籍を買った。本はこれから読むけれど、これまでの雑誌や新聞への連載分と、この本向け書き下ろしが加わったエッセイ集。語彙が豊富で「ここでこんなたとえを持ってくるか」という箇所もある独特の文体で、読んでいて楽しい
  • アンコール終了後のサイン会には、CDや書籍を手にしたたくさんの観客が並び、演奏後お疲れのところ10分もせずご本人登場。買った本に名前入りでサインしてもらう。はいまた聴きに行きます、と思える一夜だった

セットリスト

ツアー後しばらく経ったので書いておきます。正式な曲名はAmazon.co.jpなど参考に、()は原曲を基準に足しました

前半
後半
アンコール

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