21世紀の仁術~いのちに触れる最先端医療(「医は仁術」特別講演会)
「医は仁術」展を観に行ったのは、どちらかというとこの講演会を聴きにいくのが目的だった。結果的には、講演を聴いたあと展示を見て、補足理解が深まったというメリットもあった。
先端医療といっても、iPS細胞や新薬などとはまた違い、手術中にリアルタイムレンダリングをiPadで行ったり、臓器の3Dプリントモデルを駆使したり。医療教育面でも大きな効果。杉本さんはそういう分野の先駆者だと知った。オペレーション=手術現場での先端技術の広がりについていろいろ知られておもしろかった。
21世紀の仁術 ~ いのちに触れる最先端医療 ~
開催日:4月12日(土)
時間:13時30分~15時00分
会場:国立科学博物館 日本館2階講堂
演者:杉本 真樹(神戸大学大学院医学研究科/特命講師 医師・医学博士)
あとは印象に残った講演部分のメモを中心に。講演からもう2ヶ月経ち、あらためてみると我ながら断片的なメモで、文章ごとのつながりはあまりありません。各見出しも自分で勝手につけたものです
OsiriXの広まり
- 医用画像ビューアソフトOsiriX開発に協力
- オープンソース化して無償で配った。これが結果的に広く使ってもらえるブレークスルーだった
- 「このソフトをいかに一般の人が使えるようにするか?」の思いでアメリカ1年留学
- Apple社30周年記念サイトに掲載
- 使用者インタビュー OsiriXがもたらす医用画像利用環境の変革
DICOMというのは、Wikipediaによれば、CTやMRI画像の標準規格。その高精細画像を速く美しく、iOS上でレンダリングする技術に長けているソフトウェアのようだ
- 作者: 杉本真樹
- 出版社/メーカー: エクスナレッジ
- 発売日: 2011/09/26
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 5回
- この商品を含むブログを見る
消化管・肝胆膵ベッドサイドイメージング―フリーソフトウェアOsiriXでつくる3Dナビゲーション
- 作者: 杉本真樹
- 出版社/メーカー: へるす出版
- 発売日: 2009/07
- メディア: 大型本
- 購入: 2人 クリック: 30回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: 杉本真樹(すぎもとまき)
- 出版社/メーカー: エクスナレッジ
- 発売日: 2011/12/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
オープンソースのソフトウェアであっても、その分野の人々に膾炙すれば、書籍や講演、トレーニングやコンサルティング、とビジネスはあまねく広がることになる。人助けにもなるし収入面でも堅実。いい仕事されてるなあ
手術現場にIT技術持ち込み
- 内臓を可視化、連続スキャンして動きも再生。心臓が元気に動いているかわかる
- 腹腔鏡手術中に表示
- レントゲン写真は紙の地図と同じでは
- カーナビは、地図だけでなく現在地をフィードバックできるからよい
- 手術室でWi-Fi+タブレットは有用。滅菌処理できないので専用バッグ作った
ここはスライド写真がわかりやすく、その効果を如実に語っていた。こんな手術が当たり前になれば、オペレーションのミスや迷いが減り、手術時間を短くすることも可能になりそう(素人考えだけど)
- Wiiリモコンで画面操作
- 体内カメラに加速度+ジャイロセンサつけた=カメラ動きに連動して動く表示
- リープモーション、空中で指動かして画面コントロール
さらに進んだ取り組みで、空間での手の動きをインプットデバイスとしてカメラや機器を操作しようという試み。動画ではかくかくした動きしか伝わっておらず、まだまだこれからの技術という感じ
- 規制厳しくなった、画面ばかりみて身体みなくなるとダメ
- 身体にプロジェクションマッピング = "距離をゼロにした" 多くの病院で採用
- 乳がん腫瘍をマッピング、放射線治療後小さくなっても場所がわかる
- 虫垂炎のそば、血の出やすい血管を避けて切れる
患者本人の体内3次元CT画像を、手術中の本人にマッピングする。まさに"as is"、あえて固い日本語でいうなら現状有姿のまま投影。同じ人間のデータなのだからずれようがない。大規模な建物へのプロジェクションマッピングはすっかり目新しく無くなったと思うけど、サイズや目的を変えてこんな場所で応用されようとしているのは興味深い
可視化から可触化へ
- バーチャルリアリティ is not リアリティ
- 恐竜の骨組みに衝撃
- モルダラマ mold-a-rama プラスチック模型の自動販売機
持って帰りたい!その場で触ることのできる感動
型を変えて模型その場で作れる 3Dプリンタ
- 画像(.dicom)からポリゴン(.sdl)座標系へ
- 立体が作れる。術後のイメージも形作れる
- レントゲン/CT画像から模型ができる
- 複数樹脂を使うことで、外を透明にできた
- カラー樹脂も使われ始めた
- 外をやわらかい樹脂にもできる。質感も再現
- 可視化から可触化へ
- (改めて読み直すと、講演のポイントはこの一文だと思う)
3Dプリンタ模型を医療現場に持ち込む動機が語られる。目の前で見るだけでなく、触れることが大きなメリットになる。ここで「可触化」に紐づく "tangible" のキーワードが出てくる。MIT石井先生の熱い語りを思い出す。
- 模型だと、どこで切ればよいかわかる
- 模型を手術中に持ち込んで並べて確認
- 沖縄の病院でも使っている 離島
- 新人トレーニング/看護師の予行演習にもなる
このあたりから、教育への効果が繰り返し語られる。技術導入、効率化、標準化、作業品質の向上
このトレーニング、(医者でもないのに)参加したいと感じたけれど、URLなどメモするのを忘れてしまった。検索でもなかなかそれらしい出てこない
- 肝臓モデルでエコー検査、組織採取も本物同様
- 可能なことが増える。あらゆるインセンティブ、動機付けになる
- 腎臓や膵臓は脂肪に埋まった難しい臓器
- ふだんは捨てる樹脂を周りにつけ、先輩新人とで取り除く練習
- 得手不得手を事前に知り先輩の安心
- 子供の肝不全、親の肝臓を移植
- 大きくても小さくてもダメ
- 子供の肝臓除いた空間を模型化、親の肝臓を模型化
- どれくらい切るとはまるか?検討しながら実施。無事手術成功
ここでも教育。移植手術はすばらしい成果。その一方、手術費用はいかほど、と聴いていた誰もが感じたそのタイミングで保険適用の話が
- 骨など整形外科分野でモデル化に保険適用2万 軟部臓器にはまだだがすすめている
- どんどん有用性が示されればよい
保険適用後にいくら、までは出てこなかったけれど、保険適用化の流れは、その医療が徐々に国民に寄り添う流れなので、時代に応じてさらに適用範囲は増えていくのでしょう
- 内臓脂肪つき心臓はけっこう大きい。"握りこぶし"と言われるが、それは収縮期での大きさ
知りませんでした
- 体内の胎児をモデル化。 胎児を白 その他透明
- 双子を造形
12月8日(木)に、NHK BS放送のワールド Wave Morningで、医療現場における弊社の3Dプリンタ技術が紹介されました。
番組内では、2011年7月に発売開始になった最新3Dプリンタ「Objet260 Connex」で二色造形された、母体と胎児モデル「Baby-in-Mother」と恐竜博2011に展示されたアルバロフォザウルスの化石モデルが話題となりました。
- "特願2012-538117"
スライドに出願番号がありこれは思わずメモ。帰って調べるとしっかり特許査定されていた(特許5239037号)そりゃそうだ、だからスライドに番号書くのだよな
- 活動を"病院の外へ"
- 医療の進展はひとの安全から
何がモチベーションになっているかは、ご自身の重傷体験(リハビリを伴う)が大きいとのこと。やっぱり自分の身体で得た経験は、どんな映像や触感よりも大きく残っているのだろうな
Q&A
- Q)3Dプリンタの次なる進展は?
- A)次は5Dプリンタ。触感が加わる。水分量を制御することがポイント。次は生きた細胞を模型内に入れたい
- Q)3D、ミスプリントは?
- A)けっこうある。ソフトウェア側でチェック機能あり
- Q)映像に携わる者として、4Kモニタを手術室で使う杉本先生に映像技術への期待を聞きたい
- A)8Kモニタを使った手術。自然野に近く、これまで見えないものが見える