バンクーバーマラソン2015完走記:バンクーバー公立図書館編
滞在中、第二次世界大戦の開戦時期あたりまでこの街に存在していた「日本人街」のことを詳しく知られたらと思っていた。祖父がその戦時中に住んでいた街であり、この街を訪問するそもそもの理由の一つがそこだったからである。当時はどんな雰囲気だったのだろう?
結果としては、かつての日本人街の場所は分かったものの(Powell Street沿い、オッペンハイマー公園近く)、そこに当時の日本人街の雰囲気はほぼ残っておらず、祖父が住んでいた大体の場所もわからずじまい。
とはいえ、地元の図書館で情報を探すのはなかなか楽しい経験だった。マラソン後に参加した観光ツアーのバス車窓から、オッペンハイマー公園の「ASAHI」チームのロゴを見るなど、当時の雰囲気をわずかに感じることはできた。
図書館の様子、および(現在の日本とバンクーバーのつながりという視点で)帰国後を含めいくつか調べた内容と合わせて:
バンクーバー公立図書館
現地到着は午前で、午後のチェックインまでは時間があった。ホテルからダウンタウンを20分くらい歩いたところに、市内で最大の図書館があることを知った。
現代的でしっかりした設備なのに、とにかく、オープンかつパブリックですばらしいなと思った。僕のような観光客でも自由に入れる。入り口でパスポート提示を求められることもなかった
本を借りたり、何かを印刷したり、となると会員カードが必要で、その発行にさすがに居住証明などが要るようだ。以下のページは具体的でよい情報:
とはいえ、入館は誰でもOK、という敷居の低さには、社会福祉の側面もあるのだろうなと感じる
- 日本語ガイドもある。バンクーバー公立図書館にようこそ
- Locationのページによれば、ここ以外に22の図書館があるとのこと。日本では大きめの政令指定都市をイメージすれば近いだろうか
蔵書検索
番号をメモする
蔵書検索はその場のPCで行えた。このページはWeb公開されており、ログイン不要で閲覧可能。
情報探しを始める。japanese town などから検索し、このページには以下のキーワードが見えた:
- japantown
- nihonmachi
- powell street, old japantown
いくつかの資料のページ、左側にある番号「Call #」をメモする。PCそばに鉛筆と白い紙があった
- Nihonmachi (Japantown), 1941,_1941)
‥であれば
Collection:Special Coll. Ref. Map Cabinet
Call #:912.71133 O87n
- Japantown, Vancouver 2009年
‥なら
Collection:Level 6 Ref Hanging Map
Call #:971.133 V22vh」
最初は「この番号に電話する?」とか思ったけれど、本につけられたタグ番号とわかった。ちなみに上記の資料はmapとあり、探してみると地図帳だった
‥は、その紹介文を読むと、
Despite an infamous reputation for homelessness, mental illness, and an open drug scene, Vancouver’s Downtown Eastside ...
ホームレス、精神疾患、薬物、と国内文献でもなかなか目にしない単語がある。おそらくこの図書館でしか得られない情報で、かなり当時のことがわかるDVD映像と推察できた。が、あいにく見つからず
書架を歩き回る
番号ごとに書架が分かれている。日本の図書館と同じ。本ごとにつけられたラベルから、見たい本を探す
索引から記載を探す
5−6冊くらいあたっただろうか、写真を中心としたバンクーバーの歴史紹介の書籍が見つかった
巻末の索引から japantown, nihonmachi, powell street などを探す
記載はわずかながら、当時の日本人街に住む人々の写真があった
記載にはJapanese peopleとしかなかったけれど、自動車の風格やお付きの人がいる様子からは、それなりに身分の人だろうとわかる。思ったより近代的な装いだなと思った。たしかに、昭和初期にもなれば(明治大正ではない)このような雰囲気で人々は過ごしていたのだろう
書籍の撮影はあまり望ましくないはず。今回はせっかく来たのでと数枚撮ってしまった(すみません)
SUSHI LIBRARYなる店。(入っていないけど)レストランだった
図書館では、平日土日問わずワークショップが開催されているようだ。おそらく日本でいう「生涯学習センター」に近いけれど、ライティング、自宅菜園などの内容に加え「地震の仕組み」「自分の祖先の探し方」など内容が幅広い
「日本人街があった場所」の現在
その後、現地観光ツアーの日本人ガイドさんにもちらほら聞いたところ:
- 現在、オッペンハイマー公園の周り(具体的にはPowell StreetやEast Hasting Street近辺)は、ホームレスが多く存在し、治安も良くない場所
- 観光視点では訪問はおすすめせず、実際車を降りて歩く人は(たとえ地元民であっても)あまりいない
このブログ文章はなかなか参考になる:
East Hasting Street
Powell Street
日本人にとって現在のバンクーバーは?
真珠湾攻撃時代の苦しさはわからない。しかし、数日の滞在ながら、時代を経た現在、また日本人も受け入れられるようになったと感じた:
- UBCなどへの日本人留学生は多くいるし、ワーキングホリデー利用でこの地に住んでいる日本人も数多い
- HISバンクーバー支店には日本人スタッフが20人くらいいて、観光客だけでなく、在住日本人向けのツアーを扱っていた
- つまり在学在勤問わず日本人はけっこういて、生活しやすそうな街だった
- 西海岸側、シアトルにも近い。当時この地へ渡り、日本人街を形成した日本人と同じく、現在もアクセスしやすい街であることに変わりはなさそうだ
ブリティッシュコロンビア大学(UBC)
名門。バンクーバーマラソン、フルマラソンコースの前半を占める。緑豊かな、広々としたキャンパス内を走った(やや単調にも感じた)
立命館大学と大学間交流があるようだ。語学だけでない、専用プログラムを設けて、単なる交換留学ではなく、それなりにがっつり交流している感じがうかがえる
パウエル祭
毎年8月に「パウエル祭」がある。どの程度盛り上がっているのかはよくわからないけれど、開催はされ続けているようだ
バンクーバーの朝日
往路のエアカナダ便で「バンクーバーの朝日」を観た。映画の存在は知らなかったけど、結果的には、帰りでなく行きに観ておいてよかった。
日本人街に住む若者たちがメンバーで、当時この街に存在した「ASAHI」という野球チームが、露骨な差別を受けながらも地元大会で活躍し、徐々に受け入れられる、という物語だった。
受け入れられたまではよかったけれど、日本軍の真珠湾攻撃を機に、連合国側のカナダからは、差別・迫害・強制収容とおよそ非人道的な扱いを受けたようだ。戦争とはそういうものなのだろう
この映画は7月にDVDやブルーレイで発売されるようだ
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文献や漫画もすでにあるようなので、また機会を見て触れてみたい
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