always one step forward

インセプション

速くて、深い作品。思っていたより楽しめた。現実から夢という場面転換に慣れていないので、けっこう大変だったけれど、あきらかに訳わからんという流れや、ボケた描写は何一つなかった。すっきりとした、よく練られた構成だと感じた。




(たとえば日本からアメリカという)場所の移動だけでなく、(現実⇔夢1⇔夢2…という)別の空間軸での移動が混ざっている。「あれ、いま彼らはどの場所にいるのだろう」と観ながら迷うところ。そこは、「層の深さによって、時間経過のスピードが変わる」という作中ルールを加えて、ときどき主人公たちに確認のように語らせることで、観ている側も「あ、いまはこの層にいるのか」と安心できた。あるいは、ある層では雪山の白、ある層ではホテル内の黒、と色で無意識に区別させる工夫も入っていた気がする。


渡辺謙さんの存在感はやっぱりうれしい。白血病からの快復を思うと、本当によかったなと思う。冒頭と結末の特殊メイクシーンになぜか時間を使っていたけれど、何かの暗示なのだろうか。「アリアドネ」が主人公グループの名前とわからず、渡辺謙さんに対してディカプリオが「アリガトネ」と間違って言っているのかと思った。