中島聡さん講演会
Windows 95や初期 Internet Explorer の開発者、またブログ「Life is beautiful」でおなじみ、中島さんの話を聴けるということで、「中島聡 vs 若手エンジニア討論会」に参加した。題意にこめられたのは「中島さん ⇔ 参加者間の"討論"」だけれど、実際はその多くが、参加者からの一問一答からなる約2.5時間。プログラマーでもSEでもない自分にとって、仕事へ直接参考になる内容はなかったものの、広く「エンジニア」という生き方を俯瞰した場合に、今後を見据えてどう心構えを持てばよいか、自分の好奇心に逆らわずに進んでいい、などを後押ししてくれる内容。はっとさせられる言葉もいくつもあり、密度の濃い時間だった。
といっても、最近の経歴は参加前まで正直あまり存じ上げず、まさに冒頭のブログのイメージが強かった。UIEジャパンの現経営者である一方、neu.Pen LLC を設立して Pete さんとタッグで行う iOS 向けアプリ開発も現役。アプリ開発への取り組み方はこのような記事を読むとその現場感覚がうかがえる。質問者は大学生〜30代前半(と思われる)エンジニアがほとんどで、大きく分けると:
という内容が多かった。一度 Q&A がなされた内容と重なる質問が飛ぶこともあったけれど、どんな質問にも真摯に、偉ぶることなく、ポイントを外さない回答をする明晰さがとても印象的。twitterで投げていた質問にも答えていただいた:
@masa_36: アプリの多言語化、現地化は今後引き続き付加価値を持ち得るでしょうか。ちなみにneu.Notesダウンロード数の地域間ばらつきはどれくらいありますか #vssatoshi
- 多言語化の付加価値は、今後も"多少は"ある
- 理想的なのは、アイコン操作で完結するような(言語を必要としない)インターフェース
- アプリのアップデートに対応して UI もチェックしなければならず、これはけっこう大変
- Neu.Notes 無料版ダウンロード数はおおむね「米40%、日40%、あとは中国ドイツカナダなど」有料版はほとんど日本
- 日本ユーザーへの浸透はブログでの紹介が大きい
参加メモ(★印象的だった言葉)
twitter で参加者やustream視聴者のコメントがたどれて、参加後に見直すとこれも参考になる。自分のメモも将来読み直すだろうから書き残しておこう:
- メルマガをはじめた経緯
- neu.Pen は LLC wikipedia:LLC で、ベンチャー企業としては都合が良い。構成メンバーに課税され、利益が出た場合の二重課税がない。基本的に家で仕事し、Peteとのやりとりはメール。顔を合わせるのは3週間に一度くらい
- Androidアプリ=★心の底から作りたいとは、今は思えない
- Apple TV
- 奥さんが netflicks wikipedia:ネットフリックス でギャラクティカというドラマにはまっている
- 風呂場にも置きたいがずっと観てしまいそうでがまん
- UIEジャパン
- 17人(エンジニア9プロジェクトマネージャ2デザイナー3など)3月末期決算で売上2倍に
- なかなか人が辞めない会社。仕事が楽しい、裁量労働。そのような環境にあえてしているため?
- ソフトウェアエンジニア
- 残業制はまちがい!仕事したいときはいくらでもしたい。その結果土曜日出勤もありだが、逆に「○時まで残れ」「休日出勤するように」と指示するような制度はおかしい
- 経営陣は「エンジニアが仕事したいと思う環境」を作ることが大事。働き方に自由度を与える
- 「若手」エンジニア?
- ★新しいことへ向かってがんばれているか、その気持ちが残っているかどうか
- シアトル=仙台 or 福岡?
- 東京一極集中よりは、通勤時間を短くでき、より広い家に住めて生活しやすいのでは
- ここで「顧客が多い東京を拠点にするのが都合が良い」「都内でないとエンジニアが少なく勉強会が開けない」など反対意見が出て、唯一 "討論" ぽくなった。質疑応答だけでもじゅうぶん満喫できたけど、全体的には、質問数を絞って、意見を募る時間を長めにしてもよかったかも
- 「どんな人生を送りたいか」を考えていますか
- ふだんはそんなに考えていない。ただ、★自分の中に湧きあがるものには逆らえない
- Microsoft 時代の査定
- まずマネージャーが複数の部下にランク付けする。基準は「自分が辞めるなら、誰を連れて行きたいか」の順
- マネージャーどうしがランク付け結果を持ち寄り、喧々諤々しながら、最終的に部門内でのランキングをつくる。それに従って査定ポイントをつける
- 冷徹にも思えるけれど、今まで知っている査定方法のなかで一番フェアな気がした
- 「優秀」の定義
- ★吸収力があるかどうか。経験は関係ない
- 好きなことを仕事に!
- 次男を大学へ行かせたが、ドロップアウト(本当にしたいことではなかった、親の誤解があって、反省している)
- 料理人を目指している。きびしい日本料理店、毎日昼夜、皿洗いから。しかし楽しそう。楽しいことは辛くない
- アメリカにも「大手SIer vs ベンチャー、仕事の棲み分け」はあるのか
- 起業しようと考えている30才エンジニアへのアドバイス
- まずは、稼いでキャッシュを流せるところを目標にする。規模は小さくてもよい。極端な話「しょうゆを売る」でもかまわない。★大事なのは、下請けにならないこと
- または、ベンチャーキャピタルに出資してもらう。これはビジネスプランの内容次第だが、なかなか出資してもらえず一番むずかしい
- 3つ目は、働きながらがんばる。アプリやWebサービス開発。大きく行きたいなら、最初から世界市場を想定する
- いいコードを書くには/勉強方法
- 一番いいのは、人のコードをたくさん読むこと。MicrosoftではIEやWindowsのC++コードを読めたし、最近のJavaScriptならjqueryなど
- また、コードレビューをすることもよい。教える立場になっても、人のコードを読むことで、自分の勉強にとてもなる
- 1日の時間の使い方
- 特に決まっていない。集中力しだい。ブログやメルマガの準備に時間をかけることもあれば、テニスやテレビドラマの日もある
- ★ただし必ず朝(または前日の晩)にToDoリストを作っている。アプリのデバッグリストなど。リストを作るのに時間はかけず5分くらい
- ソフトウェアの仕様決めはどうするのがよい?
- 規模によらず、1-2人で書いて決める。そもそも、書ける人間が決めないとダメ
- 1-2ヶ月でそれなりに動くものを書けないとダメ
- 最近は、機能を絞って光るソフトか、多機能そのものを売りにするソフトが多いように感じている。一方、"多機能で" + "光る" ソフトを探している(そんなソフトを作りたい)
- けっこうむずかしい。Neu.Notes には描いた線のスムージング機能があり、その「スムージングの度合いを変更できる」設定がほしいという要望があった。結論としてそれは(技術的には可能だが)実装していない
- 設定変更できることの"プラス"と、よくわからずに変えてしまった人の(知らないうちに変わってしまった、元に戻せない)"マイナス" がある。★このマイナスがプラスを超えてしまうことが(特に最近は)よくある
- UIE、今後どんなことを考えられてますか
- UIEngineは状態遷移記述言語、CPUをとにかく食わないことがメリット。トヨタ車のカーナビに搭載され、今後の動きとしてはテレビ。★将来はクレジットカードにCPUやメモリが載り、そこで動くのではと思っている(そのように仕様決めして動いているということだと思う)