雨の夜、ところてん方式の傘
1
寒い寒い、と心の中でつぶやきつつコンビニへ。
手に持っていたビニール傘は、持ち手が白+傘部分が透明、のよくあるタイプ。
入り口そばの傘置きは、立てて差し込むタイプ。12本くらい収まるだけの格子があり、そのうち6〜7か所にはすでに"先客"が、やや乱雑にささっていた。
だいたい思い出すとVの位置(Oが空き):
VOVVOO
OVVVOV
冷たい雨に濡れながら、傘をたたみ、右奥の端に差し込む。
VOVVOV << ここ
OVVVOV
2
買い物が5分程度で終わり、入り口へ戻ると、置いていた場所に僕の傘がない。わかりやすく端に置いたのに?
VOVVOO << ない
OVVVOV
おそらく都市部ではよく知られた通り、「よくあるタイプ」にもいくつかタイプがある。持ち手が黒だったり、やや小さめだったり。
まあでもそれらはまとめて「よくあるタイプ」である。「家から傘を持ち忘れた夜に雨に降られ→コンビニで購入」によって、つつがなく家にたまっていく、あのタイプである。
持って行ったA氏。またはAさん。自分のものではないのに「よくあるタイプ」だから、と持ち出したのだろう。
3
仕方ないので、僕はそこにささっていた「よくあるタイプ」から一本を拝借した。いや、これは仕方がないのだ。
そして、いま僕の手にある一本を持ってこのコンビニに来店したB氏(またはBさん)は、「わかるように置いたのに?」と怪訝な顔をし、おそらく別の「よくあるタイプ」から一本を拝借するだろう。
このループは、「よくあるタイプ」の傘で来店したn人の客の中だけで閉じる。はず。
つまり最後のn人目のお客が店を出るときには、傘置きには「よくあるタイプ」が一本だけ置かれているはずである。
そのn人目の人は「置いていた傘とは違うけれど?」と怪訝な顔をしながらも、その一本を持っていくだろう。たぶん。
4
ところてん方式で傘の所有者が変わっていく。無理やりn=3と仮定すると、
傘1 - 僕
傘2 - A氏
傘3 - B氏
から
傘1 - A氏
傘2 - B氏
傘3 - 僕
への状態変化。僕の傘1をA氏が持っていき、僕は(仕方なく)傘3を持っていく。B氏は(やはり仕方なく)残った傘2を持っていく。
これをところてん方式といっていいかはわからない。先入れ先出し、FIFOという単語が思い浮かんだがちょっと違う。「寒い師走の夜、傘のバトンリレー」いやそれもちょっと違う。
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