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みなとみらい景観問題2012

「みなとみらい・新港地区に大規模な邸宅型ウェディング施設が建設予定」(PDFファイルが開きます)というプレスリリースを見た。空白で公募をかけていた商業用地に新しい施設ができるという観点ではウェルカムな話。しかしその完成予想図(PDF2ページめ)が公開されると、既存の景観 −赤レンガ倉庫+コスモワールドの観覧車+ランドマークタワーなどからなる "横浜の海沿いの景色と言えばこれ" というあの景観− を "壊してしまう"、おいおい何とかならないか、という懸念が各方面から上がっている。横浜出身ではないけれど、この近所で3年働き、住んできたので、それなりに親しみがある。このような反対要望を受けてどんな変更が行われるのか(または行われないのか)が興味深かったのもあり、いろいろ調べてみた:


都市計画や、景観をつくってきた経緯をふまえて、「建設そのものは歓迎だけれど、景観面では横浜の一等地、シンボルとしてこれまで気を遣ってきたのだから、こんなのじゃなくもっとちゃんと考えてくれ」というトーンが多い。

http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1201110015/
同社の計画概要について、横浜市長の諮問機関「都市美対策審議会」が10日、市内で景観審査部会を開催。地区計画で高さ31メートルが最高と定める地区で高さ45メートルの塔が計画されていることを中心に審議した。
 委員からは「新港地区は(赤レンガ倉庫などの)産業遺産を引き継ぐ地区であり、塔は在り方自体が期待されていない」「景観上好ましいスカイラインを形成しているとは評価できない」など、
外観や景観づくりに基本的な見直しが必要との意見が相次いだ。同部会は、事業者である同社に対し、計画変更案の提出を求めた。

http://hiro-chan.net/activity/2012/02/post-534.html
例を挙げれば枚挙にいとまがないのですが、歴史の継承という点と、横浜らしいデザインにこだわって、あのエリアを整備してきました。ワールドポーターズやナビオス、最近オープンしたカップヌードルミュージアムのデザインは控えめであること、赤レンガを模した落ち着いた配色になっているのは、そのためです。

http://blogs.yahoo.co.jp/taccolin/65396692.html
新港地区には今や横浜観光の目玉施設の一つになった感のある赤レンガ倉庫があります。
よって、新港地区は赤レンガ倉庫が一番凝った意匠でそびえてほしいと思っており、その点で既存のJAICAの施設やインスタントラーメン博物館などは控えめな良い感じのデザイン、万葉の湯やワールドポーターズも商業施設で、集客したい割には我慢したデザインという感じで好感が持て、ナビオス横浜は建物にぽっかり空いた吹き抜けが額縁のように見え、
建物自体の存在を主張しないデザインは素晴らしい!!

おそらく、横浜出身かどうかでも(自分はそうではない)意見が分かれそうだ。個人的には、

  • 夜景(ライトアップ)さえちゃんと周囲と調和させてくれたら、という条件つきながら、現在のレイアウトでも、建ったら建ったで意外としっくり来ると思っていて、景観を "壊してしまう" とまでは、どうも思えない。逆に言えば "壊す" のは当たり前で、調和を持ってゆるやかに、いかに変えて行くかを議論して行けばよいのでは
  • 景観は、最終的には(観光客など)訪れて観る人が感じるもの。たとえば「五稜郭の隣に新しい結婚式場ができました、五稜郭タワーから眺める景色に新しい建物が加わります」と聞いて、観光客が「何てことするんだ」とはまさか思わないだろう。「いやいやあの五角形の美しさを崩すものは、あってはならない」という地元の声があったとしても、観に来た人の声は「ああ、やっぱり函館の夜景はよかった」が多数なのでは
  • 土日となると、茨城や栃木、長野ナンバーも含んだ観光バスが何台も走る。日本各地の観光パンフレットに「横浜」とあればかならずこの景観が載っている。都市景観そのものが有形資産になっているのは、日本では(白川郷などもあるけれど)横浜以外にはあまり見当たらない。「日本人であれば誰でも知っているこの風景」が変わってしまう不安も、少なからず含まれているように思う。しかし、変わってから3年もたてば、その景観で横浜と認識されるはず
  • かつ、大阪市長の橋下さんが最近よく使う「なら、代案は?」に対する答えが出せないのも、一種の歯がゆさにつながっているのだろう(審議会には横浜に由緒ある現役の建築家もいるけれど、審議であって、他のレイアウトを提示できるわけではない)

こういう問題をしっかりと審議されている「横浜市都市美対策審議会」があり、議事録を読み物としてみるとけっこうおもしろいなと感じた。その感想はまた別の機会に。