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always one step forward

IT寄りの日常・IT以外の日常。ランニング。美術展や展示会感想。長文でもなるべく読みやすく構成する練習を兼ねています

ノーベル化学賞2013 プレスリリース和訳

it daily

The Nobel Prize in Chemistry 2013 - Martin Karplus, Michael Levitt, Arieh Warshel

全然期待していなかったけど、理論化学、特に計算化学分野にスポットを当ててくれた。曲がりなりにも学生時代に触れていた分野、なかなか熱いものがあり、ノーベル財団のプレスリリースがわりと読みやすい英語だったので(とはいえちゃんと訳すと1時間くらいかかった‥)祝意と敬意を表して和訳してみた。

単語メモ

  • chemist 化学者
  • scientist 科学者
  • quantum physics 量子物理学(この考え方を元にした理論化学の一分野を「量子化学」ともいう)
  • classical physics 古典物理学(文中では、ニュートン古典力学とほぼ同義。また「分子動力学法」といいかえてもほぼ問題ない)
  • devise method 方法を考案する

  • 以下両グループが対比、とするとやや理解しやすいかも:

    • 古典物理学、ニュートン古典力学、スケール大、計算時間小
    • 量子物理学、量子化学、スケール小、計算時間大

プレスリリース冒頭

Press Release

9 October 2013

The Royal Swedish Academy of Sciences has decided to award the Nobel Prize in Chemistry for 2013 to

Martin Karplus

  • Université de Strasbourg, France and Harvard University, Cambridge, MA, USA

Michael Levitt

  • Stanford University School of Medicine, Stanford, CA, USA

Arieh Warshel

  • University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
  • “for the development of multiscale models for complex chemical systems”
    • 「複雑な化学(反応)の仕組みにおけるマルチスケールモデルの発展に対して」
      • 何が"マルチ"スケール?=古典物理学(分子動力学)のスケールと量子物理学のスケール。時間やサイズの"オーダー"と読み替えてもいいかもしれない
      • 両学問ではそれらが基本的に異なるので、本来は別々に考える必要があるのだけれど、組み合わせて考えられるようにしたモデルがマルチスケールモデル
      • 「マルチスケールモデル」でWeb検索するといくつかの分野での用いられ方が出てくる。異分野での尺度を組み合わせて扱いましょう、という考え方では同じ
  • The computer - your Virgil in the world of atoms
    • コンピュータ - 原子レベルの世界におけるあなたの Virgil
      • なぜここで Virgil なのかがわからずなんだか悔しい。ウェルギリウスのことを指しているとして、「ラテン文学におけるかの偉大な詩人のように、原子の世界で化学的な理解を深める橋渡しとして重要な役割を果たした」とかそういう意味だろうか(なんか違う気がする)

プレスリリース和訳

Chemists used to create models of molecules using plastic balls and sticks. Today, the modelling is carried out in computers. In the 1970s, Martin Karplus, Michael Levitt and Arieh Warshel laid the foundation for the powerful programs that are used to understand and predict chemical processes. Computer models mirroring real life have become crucial for most advances made in chemistry today.

化学者たちが分子モデルを作る際、かつてはみなプラスチック製ボールと棒を使っていた。現在は、モデリングはすべてコンピュータ上で行われる。1970年代、Martin Karplus、Michael Levitt、Arieh Warshelは、化学反応プロセスを理解し予測できるコンピュータプログラムのための、基礎的な考え方を構築した。現代の化学においてなされてきた多くの進展において、実現象を表現するコンピュータモデルの存在はきわめて重要な位置を果たしている。

Chemical reactions occur at lightning speed. In a fraction of a millisecond, electrons jump from one atomic nucleus to the other. Classical chemistry has a hard time keeping up; it is virtually impossible to experimentally map every little step in a chemical process. Aided by the methods now awarded with the Nobel Prize in Chemistry, scientists let computers unveil chemical processes, such as a catalyst’s purification of exhaust fumes or the photosynthesis in green leaves.

化学反応は瞬く間におこる。1/1000秒にも満たない間のうちに、電子は原子核から飛び出し他へ移る。古典的な化学では、化学反応プロセスのあらゆる細かいステップを実験的にマップすることはほぼ不可能である。今回ノーベル化学賞受賞の対象となった方法により、科学者たちは、触媒による排ガスの浄化や、緑色葉の光合成のような化学反応プロセスの仕組みを、コンピュータ計算によって明らかにできる。

The work of Karplus, Levitt and Warshel is ground-breaking in that they managed to make Newton’s classical physics work side-by-side with the fundamentally different quantum physics. Previously, chemists had to choose to use either or. The strength of classical physics was that calculations were simple and could be used to model really large molecules. Its weakness, it offered no way to simulate chemical reactions. For that purpose, chemists instead had to use quantum physics. But such calculations required enormous computing power and could therefore only be carried out for small molecules.

3人の業績は、ニュートン古典力学の蓄積と(それとは根本的に異なる)量子物理学とを組み合わせて扱うことを可能にした、という点で画期的である。それまでは、化学者たちはそのどちらかだけを選択して用いる必要があった。古典力学の強みは、計算がシンプルで、大きな分子のモデリングに有用である点だった。一方、化学反応そのものをシミュレートする方法を持っていない点が弱みだった。そのため、化学者たちには量子物理学を持ち込む必要が生じた。しかしその計算には膨大なコンピュータリソースが必要で、結果的に小さい分子にしか適用できない状況だった。

This year’s Nobel Laureates in chemistry took the best from both worlds and devised methods that use both classical and quantum physics. For instance, in simulations of how a drug couples to its target protein in the body, the computer performs quantum theoretical calculations on those atoms in the target protein that interact with the drug. The rest of the large protein is simulated using less demanding classical physics.

本年のノーベル化学賞受賞者は両方(=訳者注:古典物理学と量子物理学)の世界の長所を採り入れ、古典物理学と量子物理学を両方とも用いる方法を考案した。(創薬分野での、)薬剤が体内のターゲットのタンパク質とどのように結合するかのシミュレーションを例に挙げる。薬剤と化学反応するタンパク質中の分子上では、コンピュータが量子計算を行う。巨大なタンパク質の残りの部分では、コンピュータ負荷がより少ない古典物理学を用いて計算する。

Today the computer is just as important a tool for chemists as the test tube. Simulations are so realistic that they predict the outcome of traditional experiments.

今日の化学者にとってコンピュータは、試験管と同様に必須のツールである。シミュレーションは、伝統的な実験結果を予測し得るまでに正確性を非常に高めている。

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