CP+ 2013
今年もパシフィコ横浜へ行ってきた。久々のみなとみらい駅、スヌーピーのバルーン人形を左上に見上げながら長いエスカレータを上がり、‥という道中はさておき、各社各様に工夫が凝らされた展示は今年も楽しかった。CEATECやSEMICONからは徐々に削ぎ落とされてしまった、国内メーカーの熱、勢いのようなものを感じた。
各種メディアによるニュース記事が豊富。もちろんPR記事もあるけれど、興味持つ人が多い=記事へのニーズがある=取材が多くなっていく、とも言える。全体の様子は毎年のようにITMediaがわかりやすい。言い換えれば、新製品動向だけならこれらを読むだけでもわかる。けれど、
- 展示対応する説明員に技術の質問をすると熱く話しだしてくれる、その空気感とか、
- 報道カメラマン並みのごついカメラ持ってコンパニオン撮影に歩き回る、コアなファンのいきいきした足取りとか、
- 初心者向けに噛み砕いた内容でカメラ選択の相談に乗る説明員の楽しそうな表情、
など、この場を愉しんでいる人の呼吸は、現地でしか体験できない。東国原宮崎県知事(当時)が何かのインタビューで話していた「行く土地では必ずランニングをする。走ると、その土地や人々の"呼吸"を感じることができる」という言葉の中の "呼吸" に少し近い。
各社が自社製品のPRを兼ねてブースで行うイベントも気合いが入っていて、カメラに興味があるなら開催中は毎日でも楽しめるくらいのボリューム。行ったのは結局土曜だけだったけど、もう1日行ってもよかったかな、と思えるくらい。開催数が豊富なので、予定していないけれどためになる話に"遭遇"できるのもいい。今回はオリンパスのブース、金森玲奈さんの「オリンパスデジタルカレッジ~ねこ撮影レシピ~」 猫は飼ってないのだけれど、おもしろかった。動物(猫)を撮るときの工夫がいろいろ。あとは写真を。
■ PENTAX Q10
ボディ20色xグリップ5色=100パターンが全部並んでいた。‥というところにはあまり興味は無いけれど、ここまでカラーリングに付加価値をつけるというやりかたは突き抜けてるなあと
エヴァモデル。アニメは観たことないけど、ダイヤル部分の特別塗装なんかはこのボディに合っている気がする。これはちょっと欲しくなった
左:展示のQ10、右:自分のQ。今回は若干、これを撮りに行ったのもあり
全天球カメラ
水平360度(全方位)、垂直180度(自分の足元から頭のてっぺんまで)の撮影が一度にできる。3次元の世界をほぼ忠実に2次元の画像に落とし込めていた。指で画像をドラッグすると、2D平面を通して3D空間を覗き込んでいる感覚。
撮った画像に当然現れる収差は、理論的にはたとえばこういうサイトにわかりやすく説明されてはいる。理論的には求められても、用いるレンズ(の曲率とか加工ばらつきとか)や映像素子によっても影響を受ける、いわゆるシビアな材料物性の世界、というのが僕の勝手な認識で、その辺りがうまくケアできたのだと思う。動画対応も予定しているらしい
ASUKANET MYBOOK
いわゆるフォトブック、デジタル写真を自分で自由にレイアウトした印刷アルバムにできるサービス。やっぱり印刷したアルバムで見たいね、というニーズは大きいようで、ほとんどのカメラメーカーや大手印刷会社、専業ベンダーも含めて各社リリース中で華やか。作成コストや画質などでは差がつきにくく、結局、レイアウト作業時のUIがどれだけ使いやすいか、が付加価値になっている気がする
CASIO EX-FC300S
ゴルフスイングを動画で撮影、スタンスに3色の補助線を入れてスイング軸のブレを見つけましょうという機能。その場で参加した人にプロゴルファーがレクチャーしていた。「スイング中ずっと、青と赤の線の間にクラブが入っているとよい」とのこと。仲間で楽しめそう
パナソニックLUMIXブース
この展示企画はけっこうよかった。ファッションショーのキャットウォークのような細長い通路にモニタを何枚も配したレイアウト。プロの写真家が美しいモデルさんを撮影、それをその場で見られる。次に「LUMIX持ってる人で撮ってみたい人〜」と撮りたい人が壇上に上がってレクチャー受けてた
「オリンパスデジタルカレッジ~ねこ撮影レシピ~」
さすがプロの写真家、美しい写真ばかりでじっくり見てしまった。まとめると「猫の気持ちになって、会話している気分で撮りましょう」という、わりと抽象的な話なのだけれど、おそらく相当話し慣れておられて、しっかり消化できた気になった。やっぱり人前で話すときは、早口よりは抑えめのペースのほうがよいのだな
- (写真をそのまま載せるのはもしかしたらあまりよくないかもしれない、問題なさそうな範囲で紹介します。使用されていたカメラはE-P3)
- iPhotoのスライドショーで紹介、と思いきや
- プレビューでPDFファイルの閲覧だった(惜しくもフルスクリーン = Command+Control+F ではなかった)
- 「私は、猫を撮るときはだいたい絞り優先(固定)で撮っています」「左:F1.8、眼にピントが合い、表情が残ってよいのですが、右:F22、顔の輪郭と体の毛並の美しさが残ります」
- 「黒猫の場合は露出を少し下げます、白猫だと上げます」
- これはつい逆をやってしまいそうだけど、黒を黒く、白を白く綺麗に撮りたいならそうしたほうがよいのだろう
- 「猫になってみれば、同じ撮られるでも、立った人間から見下ろされるのか、同じ視線の高さまで降りてくれた人間に撮られるのかで、心の許し方がまったく違います」
- 「猫じゃらし的なもので注意を引くのもよいですが、それだと猫じゃらしに視線が行ってしまう。レンズのほうに視線をもらうまでじっと待つのもよいです。猫は瞳が印象的、猫ごとに特徴的なので、レンズを向いた視線の力は、まったく違います」
- なるほど〜
- 「野良猫の場合、あえて引いて、周りの景色を入れることもよくします。その猫の生活、人生が一緒に現れるので」
- 「パーツだけを撮るのもおもしろいです。これは揃った前足」
- 「猫は口元がかわいく、たいてい笑っているように見えますが、あえて口元を隠す構図にすることで、視線の強さが一気に引き立つことがあります」
- たしかに
- 構図は、撮ってから加工することもできるのだけれど、撮るときに意識しないとうまく決まらない。たとえば、Instagramに残すのを前提に、カメラのスクリーンは長方形なのに、正方形のフレームに残るようなアングルを無意識に考えているのに似ている
- 表情を待つとか、会話するように、とか、全然気にしていない点ばかり
エンディングの風景
たしか17時前だったけれど、ブース終了時に一列に並ぶ、
- 右:SIGMAのコンパニオンの皆さん
- 左:そこへ一心不乱にファインダーを向ける皆さん
この雰囲気はけっこう異様ながら(といいつつ自分もその端に混ざっていたのだけれど)、おそらくもう一種の儀式になっていて、撮る側も撮られる側も楽しんでいるように見えた。最終日の1日前でこれだったので、最終日の日曜はもっと熱を帯びた儀式になっていたのかもしれない