2013.11.03 うさぎスマッシュ展 MITメディアラボ石井裕先生トークイベント
うさぎスマッシュ展 関連イベント
2013.11.03 ◯石井裕 トーク 聞き手:佐々木俊尚
「どっちが先に(あるいは深く)世界に触れられるかバトル」
いろいろ楽しかった鑑賞の後日、サイトを眺めていると、MITメディアラボ副所長・石井裕さんのトークイベントがあるのを知った。先端で走るあの人は今どんなことを語るのだろう、これは以前からとても気になっていた。無料という後押しもあって展示会場を再訪することにした。
前半は石井さんのプレゼンテーション。展示テーマに即したというよりは、これまでの研究実績や、主に311以降から現在までに考えていることを網羅したゼネラルな内容だった。
後半は佐々木さんとのトーク(冒頭の写真のような雰囲気)"バトル"とあるものの、無理やり平たく言えば、「(世界に触れるための)インプットデバイス観」をお互いが語るという趣旨だった。もちろんそんな一言でまとまるような内容ではなかったのだけれど、聴くのに集中してメモが断片的に‥やや割愛。
His way of talking
コンテクストに込められたメッセージ性にもさることながら、正直に言うと、語り口=ビジュアル面にけっこう衝撃を受けた。音声だけでなく、目の前にいる語り手が発するエネルギーが込められ、音をvisualとして扱う感じ。まさにライブトークならではで、同じ内容を動画で観たとしてもこれは感じなかったかもしれない。
日本語なのだけれど英単語が混ざる混ざる。しかもロジックはしっかりして、我が道を行きながらずばずばと本質を、という語り方。
例)「Spoken JapaneseにEnglish wordsがentangleする。logicalな strengthを伴いつつ、自らのthought、そのessenseをdirectに語る‥」
のような感じ(実際この文章を話されたわけではないです、あくまで例)、気がついたら文章の半分以上が英単語に置き換わっている状態。ご本人も途中で自ら「英語を助詞でつないだだけの状態になっていますが‥(一同笑)」のシーンもあり。話す人によってはこれをやられると面食らって終わるのだけれど、この人の場合は聴いていて迷うことがなく、逆に心地よかった。
なぜわかりやすかったのかを後で考えると:
- 使われている単語そのものが平易(高校英語レベル)
- トーク冒頭は日本語メイン、後半明らかに"英単語密度"が上がる
- 聴衆の様子を見つつ、英単語密度を選択しているようにも見えた
- 文法は崩れていない
- 「togetherしようぜ」のような箇所は一つもなかった(まあ、ルー大柴さんもわかっていてあえてああやっていたと思うけれど)
前半プレゼンテーション
熱く語られた内容はこのインタビュー記事(特別寄稿:哲学、美学がない企業に未来はなし - 東洋経済オンライン)にも重複部分があるのでぼちぼち参考にしつつ、撮影OK(動画NG)だった何枚かの写真と合わせてメモを:
- scientist or artist/designer の違い
- scientist: 神が造りたもうたプログラムのdecoding
- artist/designer: 価値観をゼロから作らなければならない
- 精神軌跡
- デジタルに残るものだけではない
- music bottles - 1999
- 製作のきっかけ:母親のため(ベッド脇に置いて起きた朝の鳥のさえずりを聴く)
- mirror fugue - 2010-2013
- 亡くなったピアニストの弾き方を実際のピアノ上で再現
- The future: not to predict, but to invent
- predict = 外挿できるものではない
- 私の研究
- 情報をどう表現するか.表現には operate も含む
- Orrery 美しいデザイン
- そろばん
- simplicity, mechanical
- いまの 3D-something は fake
- I/O Brush - 2004
- 2次元ペイントに動画を埋め込み,history という3次元目を付加
- World as the parette - バルセロナの市場
- Sandscape - 2003
- 砂を手で型作り,傾斜を与える
- 履歴がわからない
- 出杭力・道程力・造山力
- 出る杭は打たれるが,出過ぎた杭は打たれない
- 高村光太郎、自分の後に道を作る
後半トーク [I]: 石井さん、[S]: 佐々木さん
- [S] 理想的なUI = あることを意識させない UI(by ジョナサン・アイヴ)
- google glass
- [S] デバイスと向かい合う対面性から,UIを通して同じ方向を見る同方向性へ
- 佐々木さんは、他人の著作やコメントを引き合いに出すのが中心
- しかしとりあげる内容は鋭く「この先の社会をどうとらえればよいのだろう」という曖昧な疑問に一つの回答を提示していた。さすがキュレーター
- [I] 19年前のMIT研究が発端
- [S] google
- 自動車のUI
- タッチスクリーン:さわらないと操作できない
- ジェスチャーでエアコンや窓を操作など
- [S][I] シンプルなUIでも、裏側は複雑。表面的にとらえることは危険
- 基本的に意見を合わせることはない2人だった(バトルと銘打っていたから?)しかしこの点についてはお互い同意を見せていた
- [S] iOSのアイコン
- スキューモフィズム
- 機能のメタファー,何のアイコンかがわかる
- iOS7のフラットデザイン
- 「写真」などはよくわからない
- 身体を融合したインターフェース=メタファーがもはや不要になる?(メタファーと切り離された?)
- スキューモフィズム
- [S] ビッグデータ
- サンプリングしない → 因果がなくなり,相関だけが残る → 時間軸の消滅? → 時間に対する考え方が変わる?
- [I] iPadというstupidity
- 要は、自身の研究ベクトルとはかけ離れた、インターフェースとして何にも到達していない、という文脈だった気がする(このへんが痛快というか、はみだしてる感満載)
- [I] カギ束=ポケットにある physicality
- 「クラウド上に鍵いくつ持ってますか?」
- [I] 地球温暖化
- 原因/結果のin/outだけで対処しようとするナンセンス
- 佐々木さんの話を聴きながらメモを取る石井さん、手にはペンと縦開きのA4サイズのスケッチブック
- 自分もそうなので、「そうですよね、やっぱり情報を得ながら思考を整理するには手書きのメモが一番ですよね」と共感できてちょっと嬉しかった
【深謝】佐々木さん、MOT知の異種格闘技、楽しかったです。是非また! RT @minoru_st: 東京都現代美術館なう。石井裕さん @ishi_mitさんと佐々木俊尚 @sasakitoshinaoさんのトークセッション始まる。
http://t.co/m2AG2KveLo
— Hiroshi Ishii 石井裕 (@ishii_mit) 2013, 11月 3
写真
- 入場整理券出た。200名定員ほぼ満席
- 石井先生は脇をあけて撮るスタイル
- 東日本大震災アーカイブ 311以降、残る/残す情報への価値観が大きく変わった
- 宮沢賢治「永訣の朝」手稿
- 【身体痕跡】原稿の筆跡、手直しの跡、紙の折り目やしわ、書籍になると失われるものばかり
- 死後もツイートは残る
- 発言を発信し続けるbotアカウント
- 【雲海墓標】
- 航空機技術も成熟というけれど、その場で事故が起こったら?マニュアルめくる?空中でリプログラミング?飛行中にコンピュータ再起動?
- 対処療法の手段ではなく、コンセプトを作らなければならない
- 「tangible bits」pとdの配置が絶妙なスライド
- 「I/O Brush」物に当てて色を読み取り(入力)画面上にその色で絵を描ける(出力)入力が混色なら出力もそのまま
- バルセロナの市場で見た the world as the palette
- 「radical atoms」
- ご本人のツイートと同様、【漢字】に込めるメッセージ性が特徴的
- 質問時間あったけれどやや時間切れ、以下はぜひ聞いてみたかった:
- 「日本語の話者として、漢字の持つ有用性、凝縮性をどのように感じておられますか?」
- いや「Japaneseのnatvie userとして、漢字letterのusability, compressibility, integrityをどう感じられていますか?」
- 「2200年を生きる未来の人々に‥」
- この視点は聴いていて一番得られた点だった。今までこんなことを考えたことはなかった
- 講演内容は尖っていても、終了後は旧知の人とにこにこ話す普通のおじさんにも見える
- こういう瞬間だけでも人間性が見えるなと感じる