2013.10.13 うさぎスマッシュ展 - 東京都現代美術館
- 場所:東京都現代美術館
- 会期:2013年10月3日(木)-2014年1月19日(日)
同時開催「吉岡 徳仁 "Crystallize"」の美しさの余韻を頭の中に残しつつ、一言で言えばスプツニ子!さんの作品を観に行ったのだけれど(→末尾付近に感想を)、期せずしてインフォグラフィックやネットワークマップにも出会えた。サブタイトルの「世界に触れる方法(デザイン)」とあるように、情報表現を工夫して世界を把握する、という目的にアートがぴったり合っている好例を堪能できてよかった。
- Fashionsnap.com - デザインで世界に触れる「うさぎスマッシュ展」アーティスト21組参加
- japan-architects.com - アトリエ・ワン、OMA、ライゾマティクス等参加の「うさぎスマッシュ展 」レポート
などのちゃんとした紹介記事や展示会概要も適宜参照しつつ、以下感じたこと写真つきで:
展示会の名前
不思議な名前の展示会。勝手に、あのキューティーハニーをオマージュしたのか、と思っていたらあれは「ハニーフラッシュ」だった。ハニースマッシュというカクテル、バニースマッシュというゲームは世の中にあるらしいけれど、展示会概要によれば、どうやらそのあたりから取ったものではないようだ:
世界の捉え方が変わってしまうような驚きの体験は、うさぎを追いかけているうちに別世界に足を踏み入れてしまった不思議の国のアリスに例えることができるでしょう。うさぎは私たちをワンダーランドへ誘い、常識的な見方や固定観念に一打(スマッシュ)を与える者の象徴です。展覧会タイトル「うさぎスマッシュ」は、そのような世界に対する別の入口への誘いを意味しています。
全体の印象:考えすぎなくてOK
- 作品ごとに示される内容や背景が具体的
- 印象絵画にあるような「この女性の頬の肌色に○○を見いだせます」とかいう抽象性の解釈は、まあ求められない。そこで迷い始めて「それはそれは退屈でした」という状態で終わる危険性も少ない
- かといって考えすぎなくてOK
- 具体的だから理解しやすいのだけれど、仮にネットワークモデル云々の深い知識がなくとも、展示の仕方に工夫がこらされていたので、あまり考えすぎずに楽しめる構成になっていた
- 作品動機の丁寧な解説
- 「なぜこの作品を作ろうと考えたのか」の解説が、各作品とても丁寧だった。「内容は理解した、で、なぜこれを作ったのだろう?」の疑問にほぼすべて回答してくれている
写真
写真撮影OK(動画はNG)だったのでけっこう撮った:
- 入口。秋晴れのMOT
石井裕さんビデオメッセージ
- そういえばこの人が日本語で長く話すところは観たことがなかった
- ほぼ一定のトーンで論理的な言葉の組み立て方。さすが
- 2013/11/3(日)石井裕さんトーク。うーんもう1回行ってみようかな
- 高校/大学化学で習うラジカルとは少し変えた意味でradical atomsが使われている。ビジョンの紹介ページの4段落目:
Our vision of “Radical Atoms” is based on hypothetical, extremely malleable and reconfigurable materials that can be described by real-time digital models so that dynamic changes in digital information can be reflected by a dynamic change in physical state and vice-versa.
- しかし本来の意味 - 不対電子を持った原子/分子/イオン - はもちろん理解された上で、反応性が高いとか、フレキシブルとか、他と反応をしたがっている、とかそのあたりのイメージを結びつけられたのだろう
- もっと言えば、"不対電子を持った" は紙面に簡単に書けるけれど、量子物理の視点ならこれもhypotheticalでしかないので、malleable and reconfigurableはより本質を表現しているとも言えそう
迷宮の庭(レアンドロ・エルリッヒ)
- 会場入って最初に観る
- 部屋の中は鏡面で1/4ずつに仕切られていて、窓からのぞくと自分自身が向かいの壁2カ所に映る
- しかし空間全体は部屋1つにしか見えない
- 言葉で表現難しいけどとにかく不思議
EUバーコード(OMA*AMO)
- インフォグラフィック。いろんな視点で見るヨーロッパ
- EUは1色、地域文化圏では多色の現実
- 企業名でヨーロッパ
- 宗教ごとにヨーロッパ
- 政党たくさんヨーロッパ
- EU発足後の加盟国の変遷をバーコード表示。まさに世界に触れるデザイン
- と部屋を見上げると、"掲げられた"EUバーコード国旗があらためて目に入るという構成
シアトル中央図書館(OMA*AMO)
- 建築デザイン。紹介ページによれば、書籍だけでない、あらゆる情報の集積場所としての図書館の "再定義(redefine)" なる単語も見られる:
OMA's ambition is to redefine the library as an institution no longer exclusively dedicated to the book, but rather as an information store where all potent forms of media - new and old - are presented equally and legibly.
- 樹形にまとめられた「情報メディアの多様化」
- 元は英語だけど日本語化されていて読みやすい
- 建築物としてのパーツに英単語がはめこまれている。これは日本語にするとかっこがつかないかも、と感じるのは自分が日本人だからか
- 図書館自体は2004年完成、ほぼ10年経つ作品
- 別部屋に移るとこの配置
- 中央のあれは何だ、、とあえて避けるようにまず壁際の作品へ
(正式作品名忘れ)
- 見取り図がアート
- 図を俯瞰するだけなのだけれど、そこでの人々の生活を想像させる試みに乗れれば見入ってしまう
- 中銀カプセルタワービルなんて存在も知らなかったけれど、Wikipediaに書いてある設計〜取り壊し案〜そのままというストーリーはなんだか興味深い
考えるうさぎ(Marnie Weber)
- 中央の奴はこれだった
- 動かないのにこの存在感。仮に立ち上がるとおそらく180-190cm級
- ちなみに原題は「丸太婦人と汚れたうさぎ」となっていた
- 女性が木の中に横たわり
- 反対側から動物が顔を出す
モノバケーション(ブラク・アリカン)
- ネットワークマップが奥に見える
- 世界中の観光関連のCMに含まれるキーワードをネットワーク化
- 見づらいけど「歴史的建造物」「男性」「女性」「太陽」あたりが中心付近で、他の用語と多くリンクしている
- 各国各社工夫してCMは作っているはずだけれど、訴求するポイントは結局まあ、同じような内容になりますねえ、ということがわかる
- 裏返せば、どこへ/いつ/誰と旅行するにしても、観光客のニーズも実は似たようなもの、とも言えそう
音声ガイド
- いやあこれを耳にかける勇気はなかった。。50人に1人くらいの割合?男女問わずちらほら見かけた
- いや、かけている人を見ても何とも思わないのだけれども。\300と安かったのでいくべきだったか
世界政府・経済危機(ビュロ・デチュード)
- 高密度なインフォグラフィック
- 元言語版がすべて日本語訳され、拡大プリントで壁に貼り付けられていた
- 情報量に即した製作コストはおそらくかなりのもの。もちろんそうする価値があると判断されたからだろう
- 1人ずつしか観られない「静かに転倒する世界」の待ち行列の脇に置いたのも、じっくり内容を観られるようにという思いからの配置だったのかも
- インフォグラフィック
- 医薬品メーカー
- 大学のネットワーク
- アメリカ政府系組織
- 世界の媒体(監視システムも‥)
- かなりごちゃっとしているのに見やすい。この凡例のおかげ
においの風景
- 嗅覚の可視化。においを言葉で表す
恐怖 07/21
- これも嗅覚。異質なのは「人が恐怖を感じたときに発する汗の匂い」を集めて、それを擦り付けた"壁"を作品としている点
- 一応嗅ぎ比べてみたのだけれど、よくわからなかった。鼻の利く人は違いがわかるのかもしれない
- 左脇に空気清浄機がフル稼働していた。目的を考えれば右脇にも必要かも
トーキング・ノーズ
- これも嗅覚。においを表現する言語を収集して整理
traders(ライゾマティクス、真鍋大度)
- 暗い大きな部屋に入るとこの映像(動画で撮りたかった‥)
- リーマンショック前後など、秒単位での株価の乱降下を、星の運動や衝突のように可視化、、様子を言葉にしづらいけど鮮烈
ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩(スプツニ子!)
- 終盤付近の大部屋。個人的にはこの作品を観に来たのだった
- このメインディッシュの前に、他作品(オードブルやスープ、サラダ)を充分堪能して来たので、かなり(いい意味で)満腹感があった
- 高さ10m 幅20mくらい?巨大インチのスクリーンに楽しい動画が流れる
- YouTubeに同名の動画がやや短縮版で上がっているけれど、あえて観ずにここに来るのも新鮮でよいかもしれない
- 月面にヒールの足跡を残したいと近所の砂場でデモンストレーション
- そして、展示部屋入って左側に、作品中に登場する "COCKPIT" がそのまま鎮座している。もう映像中のそのまんまという感じ
- OAタップを通して電気を通すところも再現。こだわりを感じる。作中も短いカットながらこの COCKPIT の細かい描写がけっこうあって楽しい
- デジタル時計は現在の時刻、画面もWindowsが立ち上がり、ウイルス対策ソフトの更新ワーニングメッセージが出ているあたり、本物のパソコンを立ち上げていることがわかる
- スクリプト画面も適当かと思ったらそうでなく、C言語かVerilogあたりのいかにもハードウェア記述言語らしきものだった(細かく見すぎか)
正式作品名忘れ
- 南北朝鮮問題やフォークランド紛争をスポーツ競技やゲームのように俯瞰
- ブラックジョークとも言えるし、こういう作品がそもそも展示され、冷静に鑑賞できるのも日本ならではの特徴かも