プロフェッショナルを演じる仕事術
レビュープラスより送られた書籍のレビューです。
まとめ
ロジカルな短文からなる文章構成、具体的な例示が続いてわかりやすかった。「ストーリー」「フレームワーク」をビジネススクールで学ぶ人にとっては、既習のテキストを読むような既視感があるかもしれないが、通ったことがなく「結局フレームワークって何?」という自分には新鮮な内容だった。少なくとも「演じる」という単語から受ける「まねごと・本心でない」などのイメージは取り払って読んでよいと思う。
- 作者: 若林計志
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/10/19
- メディア: 新書
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各章についていくつか。
第1章 取調室でカツ丼を食べる謎(ページ数31)
- さっそく「ストーリー」がキーワードとして出てくる。「ストーリー何ですかそれ」という場合、この章をじっくり読んでおくと後であやふやにならずにすむ
- 30-31ページの「ピーターの法則」に笑ってしまった。言い換えると「名選手が必ずしも名監督とは限らない」「大企業病」こうならないようにと気づけた、という意味で、昇進しきっていない今の段階で読めてよかったと思う
- 人は、無意識に自分で描く(描いてしまう)「ストーリー」の中で「役」を演じている
- 「役」を演じることで感情が生まれ、予想していなかった成果につながることもある
- 「予定調和」は心地よく、陥りやすいが、そこから抜け出すことが大きな一歩
第2章 ストーリーはどこからやってくるか(21)
- 様々なエピソード(親と子供、大成した著名人から土産売りの子供まで)から、ストーリーをどうやって掴むのかという事例紹介
- 55ページ「教育現場では経営者の立志伝は一つも教えられず、商売のイメージを持たずに育ってしまう。むしろ "越後屋" のようなネガティブイメージしかない」という点はなるほどと思った
- 子供にとって一番のストーリーテラーは親「背中を見て育つ」
- 期待される理想と現実のギャップに悩むのは誰でもある。勘違いせず謙虚になれば「役」に飲み込まれることはない
第3章 プロフェッショナルのスゴさを「見える化」する(35)
- 主観、客観の話。「自分を客観的にみる」ための手段の1つとして80ページあたりから「フレームワーク」が詳細に語られる
- 「自分の場合はこういうことかな」とアウトプットしてみるのもいいと思った。まさにこの著者を「プロフェッショナルとみなして、演じる」作業だ
- ほかにも、メンタルモデル、メタ認知、戦略の3C、マーケティングの4P、アソシエーションなどキーワードが並び、だいたいわかりやすく説明されているけれど、興味がなければ読み飛ばしてもいい内容
- メンタルモデル=良くいえば長年の勘、悪くいえば偏見。主観の中に偏見が含まれていないか、よく考える
- メタ認知=自分のこと話したり書き出したりすると、自分がよくわかる
- 新しいことへの接触はゼロベースでないといけない。「これ」は知っている「あれ」だ、の瞬間に思考停止
第4章 仕事をゲームに変える方法(32)
- 「フレームワークには3つある」という展開で、章のタイトルにほどとっつきやすくはない
- 「精神フレームワーク」122ページからのディズニーランドのキャストのエピソードがわかりやすい
- 126ページから「達成動機が上がると仕事はゲームになる」実業務でこれはなかなか難しいなと感じた。成功体験の蓄積は大事で共感できるけれど。対話が大事、という部門に限って対話ができていない、ということは良くあると思う
第5章 「負ける技術」を身につける(30)
- 逆にタイトルそのままでわかりやすい。謙虚になりましょう、きちんと負けて経験を得ましょう
- 心理学の側面で「コンプレックス」を説明
- 「負けるためには2つコストを払う必要がある」は新鮮。読書量が大したことないだけかもしれないけれど、サンクコストがこんな文脈で使われるのは初めて見た
- サンクコスト sunk (not thank) cost 損切り、引く勇気
- スイッチングコスト:やり方を変えるには抵抗がある。しかしそれが必要なこともある
第6章 トイレを磨くと儲かるか(41)
- タイトルになったエピソードは冒頭に紹介され、結論はよくわからない。けれどそれ以降の内容が、個人的にはいちばん実になった章だ
- 171ページ「ハロー効果」いろんな事例、言葉の紹介が豊富で、この本そのものがこの効果を持っている
- 181ページ「知っている」と「できる」は違う、という経験はよくある。「そのことを理解しているかは、自分の言葉でそれを説明できるかどうか」に近く、セミナー講師をするようになってからは、「この用語はどう説明しようか」という訓練を無意識にするようになった
- 身体で覚える、使える力にするために「最低1万時間が必要」って途方もないけれど、仕事なら1日8時間として10000/8/365=3.42年、まあ妥当なところ
- 楽器練習を週4時間として10000/(52*4)=48年、、、週8時間としても24年、、、素人演奏者にプロの道ははるかかなた
- 184ページ「フロー状態」も何となくわかる。充実した仕事をするとき、時間は感じない。夜遅くなってもいい。出張の移動時間も短く感じる
- もちろんその逆もあり、これは「役」の不一致から来ているのだというのがわかる。最近は管理( manage でもあり maintenance でもある)側の視点が必要なことも多くなっているけれど、これに気をつけてみようという気になった
第7章 プロフェッショナルからの正しい学び方(20)
- 210ページ「守・破・離」は初めて知った。師匠から学ぶプロセスとして、茶道でも華道でも剣道でもこれがあるという
- 「まずは真似る」と来た瞬間に「あ、行動フレームワークか」と思えれば、まあこの本を読めたと言ってもいいのでは
- この著者がお気に入りの1冊なのだろう、立川談春さんの『赤めだか』が何度か引用される。談志さんが亡くなったこの時期に読む縁を何となく感じ、これも読んでみようと思う
- 作者: 立川談春
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/11
- メディア: ハードカバー
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