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ありふれた感じのとんかつ店との邂逅

photo by hirotomo

写真も店名も出さず、ある店のことを書いてみようという試み。(上の写真はイメージです)

最近、コミュニティサイクルを会社帰りに使うことがある。東京都4区内(千代田区/港区/中央区/江東区)にぽつぽつと設置された自転車置き場(ポートと呼ばれる)の間で、赤い電動自転車を乗り降りできる。

東京・自転車シェアリング広域実験(千代田区・中央区・港区・江東区)

自宅にもっとも近いポートに自転車を置き、徒歩で自宅へ向かう。その道筋に1店、ありふれた感じのとんかつ店が営業中なのに気づいた。

店に入る前

ぱっと見は、古い木造長屋という雰囲気。周辺はオフィスビルが並び、大きな通りに面していないため夜はかなり静か。ビル街の木造建築、目立つといえば目立つ。

ランチ時はきっと混むのだろう、軒先に食券販売機がある。「夜は店内で清算します」とある。数名の先客が見える。

普段の平日、1人では、なかなか外食の店には入らない。しかし、

という点が重なり、特に躊躇することもなく、暖簾をくぐり、今や懐かしくなった引き戸を横へ開けた。ガラス窓が嵌まった木製の引き戸の、開けるときの音もなんだか懐かしい。

店に入る

L字型のカウンターといくつかのテーブル席。15人も入れば満席という感じ。

カウンターの一角に座ると、厨房を目の前にできた。厨房との距離は小さく、洗われた食器のカゴには手を伸ばせば届くほどの距離。

  • 少なくとも客から見える位置の内装は、清潔に保たれている
  • 2名の店員は、たまに談笑しながら、しかし基本的には黙々と、準備や調理や洗い物に手を動かしている

悪くない雰囲気である。初めて行く店であれば、上に書いたいずれでも欠けると、個人的にはその店にいい印象を持たない。

先客は1人客3名、2人客1組。2人客の会話は(会話でなく)音として聴こえる程度で、店全体は静か。しかしなぜか暗くはない。

向かって左奥からの、とんかつを揚げる音が、静謐さの中で唯一目立つ印象的な音。

いつのころからか、準備が見える店では、その所作を、どこということもなくのんびりと眺めるようになった。こういうとき、スマートフォンを触って待つのは何だか味気ない。雑誌/新聞で待つほど余裕のある常連ではない

食べる

10分ほど待っただろうか。ヒレカツ定食 - 白ご飯、赤味噌汁、そしてヒレカツとキャベツがのった大皿 - が運ばれてきた。

おろしヒレカツ定食にしたので、カツの上に丁寧に大根おろしが添えられた。

カツのやわらかさ。炊き上げられてまもない白ご飯のやわらかさ。おいしかった。よい料理にあまり言葉はいらない。

食べた後

店員さんは、朗らかな声で「ありがとうございました」と帰る客を引き戸のところまで送る。

自然と「ごちそうさまでした」という言葉が出る。

なんと珍しいことに、店名を覚えずに出てきてしまった。正確に言えば、店名は気にならず、その雰囲気や味だけが印象に残った。

場所はわかったので、Googleマップで検索できるかもしれない。けれどあえてそうしていない。

またあの道を通ることはあるので、そのとき食べたくなったら入ってみよう。

きっかけの1つ

この方の文章力にはいつも感心する。「ああそういうことあるよね」という内容が多いけれど、「その視点はなかった」が多く添えられている。

ロジックがしっかりしているからだろう、近年のブログエントリには当たり前になった「見出しで区切る構成」ではないのに読みやすい。

食べログに代表される集合知を参考にする人が多いけれど、私は、という内容。

だいたい共感する。★の数はある程度参考にするけれど、レビューはあまり読まない。

店に入ってみよう、と思ったのはたしかにこの文章の影響が大きかった。

そして、店の人と会話しようと思えばできた。しかし結局しなかった。恥ずかしい、とも異なる微妙な感覚で、後悔はしていないけれど、結局「ごちそうさま」「ありがとうございます」で満足してしまったのかも。

店選び、何を参考にするか

食べログがどんな仕組みで点数を決めているのかには興味がある。

http://tabelog.com/help/score/

「食通度合い」は独自のアルゴリズム(算出方法)により毎日算出更新しており、食通度合いの高いレビュアーの採点がより大きく影響するようになっています。

「食通度合い」の低いレビュアーの採点は点数計算に反映されないようになっており、 意図的にお店の点数を操作することが困難な仕組みになっています。

とあるけれど、食通度合いの高いレビュアーの点数により、意図的な操作はできるとも読める(もちろん実際の回答は「そうではありません」だろうけど)

しかしそれでも、一時代前 - ぐるなび+hotpepperだけの時代 - にくらべれば、判断基準が増えてよかったとは思う。

個人的によく見ているのはわりと以前から以下のサイト:

一休.com レストラン

サントリーグルメガイド

各種まとめサイト、キュレーションサイトも見るけれど、何らかの意図が含まれた広告になっている点は常に差し引いて見ている(記事広告またはネイティブアドと同じ)

食事に関する本はほとんど読まないけれど、邂逅のきっかけ、読みだすと楽しいだろうし、実際に行ってみようか、という店も複数見つかる気がする。