「9次元からきた男」試写会 - 万物の理論 ToE の探索、迫力の3Dドーム映像で可視化
2016/04/20公開予定、約30分の映像作品。事前試写会に参加した。理論面でがっちり監修に携わった大栗博司先生のレクチャーも鑑賞前に聴けて、有益な時間だった。
記憶がフレッシュなうちに、と参加後に連続ツイート:
日本科学未来館 #9次元からきた男 大栗博司先生レクチャー。作品観た後/観る前の人で混在する聴衆(この時点で高難度)に、作品背景の理論部分を明快解説。"138億年"を支える3つの証拠から、万物の理論が何なのかまでを理解できる pic.twitter.com/k8pi438xPC
— masataka (@masa_36) 2016年3月26日
感想としてはこれがすべてという気もするけど、レクチャー時のメモも残してあったので以下はそれを中心に(これから観たい人向けの情報を末尾に入れました):
はじめに
日本科学未来館 科学コミュニケーター Dimitriosさんの説明。
そして、
- 万物の理論とは何なのか
- 何がどこまでわかっていて、わかっていないのか
という点をわかりやすく可視化しよう、というのがこの映像制作の目的
科学コミュニケーター
以下のコンテンツは今回初めて存在を知った。 教科書以外で科学を知りたい子供向けの内容が多いのか、と思ったら、文章の長さやイベント内容からみると、大人向けもけっこうあるようだ
科学コミュニケーターブログ | 対話で科学を伝えている科学コミュニケーターによる日記です
https://www.facebook.com/miraikan.jp
3.11以前も以後も、(大きな母集団としてみた)日本人の間では、「科学はとっつきにくい」の風潮はあまり変わっていない気がする。上記は、いわゆる「サイエンスコミュニケーション」の文脈で、もっと取り上げられてもよいコンテンツだと思う
大栗博司先生のレクチャー
お話を数分聴けば「難しいことを x 易しく話す」ができる方ということがわかる。安心して"耳を委ねる"ことができる
この作品は何を目的としたか?
- 映像による、理論やデータの可視化を目指した(数字、数式だけではよくわからない)
- イラストリス:可視化プロジェクト
- 画像や映像、いろいろな"作品"がみられる。作品といっても抽象的なインスタレーションではなく、理論/実験に基づくデータの可視化、というのが特徴
レクチャーメモ(かなり抜粋版)
宇宙は138億年前には、高温・高密度の状態だった。そこから膨張した
- 膨張したと言える3つの証拠
- ヒッグス粒子の中を光が通ると、スピードが遅くなる
- 「ヒッグス粒子は質量を与える」の映像化
- ビッグバン以前
- 超弦理論(仮説)
- 素粒子物理学の世界では、数学の力がとても大きく、大切。数学と理論が両輪
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Q&A
なぜ「9」次元なのか?
質問者からは「"9"は素粒子の"17"種類と何か関係が?」とあり、なるほどと思った。
すくなくとも現時点の理論/実験結果から合理的に言えるのは17で、たとえば5年後に「実は理論上25でした」「いや4に収斂しました」という可能性もあるのだろうなと思った
ひもは結局何を表しているのか?
- 物質の基本単位
- 映像では「エネルギー振動のようす」とあった。素粒子によって振動のパターンが異なる。このパターンを紐で示していた
「ひも」が何を表しているのか、を咀嚼できると、映像への理解もより深まる気がする。この点は、映像を観る前にレクチャーを聴けてよかった
- 宇宙に特別な場所はない
- 「ビッグバン」はどこか特別な1点から始まったのではなく、「どこも同じ状態」から始まった
- 一般的にはそのような画像/映像表現がとても多く、そうではないことをなんとか表現したかった
製作者コメント
監督 清水崇さん
- 大栗先生と関われたことで、またこの映像を制作することで、子供の頃の「宇宙はどうなっているのだろう?」という気持ちを持ち続けられた
- 子供の頃に戻る体験ができた
ビジュアル・ディレクター 山本信一さん
- 「万物とはなんだろう?」は、物理の世界だけでなく、アートの世界でも究極の問い
- 1年間格闘し、今の自分なりのベストを表現できたと思っている
この分野をさらに深く知りたい場合
レクチャー中、いいタイミングで(=適切なタイミングで=講演内容に即して)大栗先生自著の紹介が挟まる。
語り口を聞けば想像できるように、なるべく平易な言葉で語られていて、たしかに読んでみようかなと思われてくれる
強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く (幻冬舎新書)
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そして、最新の日経サイエンス「大特集 重力波」にも大栗先生の寄稿がある:
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これから観たい場合
- 4/20から公開。4/8時点でWeb上から予約可能になっている。しかし4/20以降しばらくは「一般」はほぼ満席
- 予約できたら、あとは現地(日本科学未来館)へ行くだけ。1人¥300と手軽
- ゆりかもめ「船の科学館」駅「テレコムセンター」駅、いずれからもほぼ同じ距離
- 電車の足だと、お台場の中でもほぼ"先端"といえる場所
公式サイト
「プロダクションノート」や科学的視点での解説(といっても一般向けの内容になるはず)がそのうち公開される予定
予告編動画(約1分40秒 音が出ます)
- 大まかなイメージをつかめる
- ネタバレ内容はなく、事前に観ても観なくても大丈夫
- さすがというか当然というか、映像の中でも「これは‥!」という部分は含まれていないのでそこはお楽しみに