ロッシェル・カップさんトーク:朝日新聞GLOBE紙面リニューアル記念イベント
朝日新聞GLOBE紙面リニューアル記念のイベントに参加。ロッシェル・カップさん講演を聴ける機会があった。
ビジネスシーンでの異文化体験(=多くは、日本人として英語圏の人々と接する際に何に気をつければよいか?)という視点で楽しめた。
いまや日⇔米だけでなく中、印、欧etc.も含んだ「異文化」に触れる可能性がある時代。「人間対人間なのだから最後は分かり合える」とある種の"性善説"に寄るだけではなく、歩み寄り、相手を理解しようとする姿勢があれば、より円滑なコミュニケーションや相互理解が進むのだなと実感した
終了直後の感想:
朝日新聞GLOBE紙面リニューアル記念、ロッシェル・カップさんトーク。言語だけにとどまらない日米ビジネス慣習の差を認め、お互い歩み寄り、会議進行や支店開設をうまく行うエピソードなど。様々な質の質問への的確な回答が印象的 pic.twitter.com/tmGvkunCeb
— masataka (@masa_36) 2016年4月15日
公式レポートや講演動画
- 朝日新聞GLOBE編集部によるレポート(さすが正確で明快)
- 講演動画もあり(動画なので当然ながら、口調やトーンもよく伝わります)
- ご本人は紙面で「見出しを読み解く」連載を持ち、書籍にもなっている:
見出しとリードで読み解く英語ニュース HEADLINES on the web ([テキスト])
- 作者: ロッシェル・カップ,後藤絵理
- 出版社/メーカー: 語研
- 発売日: 2014/07/03
- メディア: 単行本
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以下は、何となく取っていたメモより(見出しは自分で適当につけました)
- 公式レポートや講演動画
- 最初の異文化衝突経験 Working lunch
- "変える"が目的でも、変え方に問題が
- 何が大切か?
- ハイブリッド対応の一例
- 日本人のいいところ◯/よくないところ△
- 英語にしづらい日本語
- パネルセッション
- 私的「転換点」の書籍:ビジネスライティングの英語表現
最初の異文化衝突経験 Working lunch
- ある会議を見学。通訳は急場しのぎで準備され、不十分なコミュニケーションのまま終わった
- 昼食時に打ち合わせをすることになった
- 1人ずつの弁当でなく、ポテトサラダを自分でserveするような、デリ形式の昼食だった
- 打ち合わせもぎくしゃくした雰囲気のまま。自身の経験も充分でなく、うまく指摘できなかった
- アメリカ文化・日本文化の衝突。disasterとも言える
ビジネスシーンでの衝突をなくしたい、円滑なコミュニケーションを助けたい、という気持ちが今の仕事へのきっかけに
"変える"が目的でも、変え方に問題が
- ある会社文化を変える目的で採用されたアメリカ人
- 問題点を積極的に(aggressive)指摘。自分のやり方を通した
- 聞く側は及び腰になり、効果は出なかった
何が大切か?
- オープンマインド
- 国が違えば、文化は違うもの、と理解する
- 「何でもオープンな社風。会議で何でも発言してよい」は一見よいけれど、逆に発言しづらい雰囲気をつくってしまうこともある
- 文化の違いをうまく埋めあわせる戦略をとる
- 歩み寄り、ハイブリッドな対応
ハイブリッド対応の一例
- 日本企業がシカゴに支店を開くことになった
- 日米エンジニアが1つのチームに
- 会議では:
- アメリカ人:発言が多い、早口
- 日本人:発言少なめ
- 「ばかな質問は存在しない」などルールを設定し、会議での議論が活発になった
- 会議では:
日本人のいいところ◯/よくないところ△
◯
- 整理整頓
- 美的感覚
- 「他人へお任せ」できるマインド "leave it to experts"
△
- あいまいさ
- 間接的コミュニケーション(何を言っているか不明なときがある)
- みんなが同じ行動をとる、と期待されている
- Not flexible
- コースメニューA、B、Cがあるレストラン。ある外国人「Aのサラダ、Bのメイン、Cのデザートを選びたい」→店員「できません」
英語にしづらい日本語
- 「根回し」getting everyone on board
- 「よろしくお願いします」Thank you in advance.
- 法廷で鍵の証拠となる手紙、末尾の一文「よろしくお願いします」
- 本当の意味は何か?言外の意味はあるのか?で1日じゅう議論になった例がある。あいまいさが出ている例
- 「おつかれさま」Thanks for the hard work.
- いい言葉なのに、英語には「おつかれさま」ニュアンスの表現そのものがなく残念
パネルセッション
カップさんの発言もさることながら、渡辺雅隆氏(朝日新聞社長)の穏やかな口調から発せられる意見も勉強になった
この時代のメディアのありかた
- 紙の新聞は発行部数がかなり減っている。日本は、アメリカほどdrasticな変化はまだない
- Twitterをニュースソースとして使っている
- Facebookをソースとして使っている人も、統計上は多い
- ネット上のニュースは、24時間365日対応。流れる情報へのkeep upが必要。かといってたくさん追っていると、時間がすぐなくなる
- clickbait の記事も増えてきた
「クリックベイト」は初めて聞いたけれど、2014年夏ごろに記事が多く見つかる
社説作成過程の公開?
個人的には、メディアが取り組んでいる「双方向性」の実現に成功しているところはほとんどないと感じている。たとえばソーシャルメディアと連携し、コメント欄をオープンにすることが「双方向性」なのだろうか?
そういう中で、上に書いたような「社説作成過程の公開」は、(双方向性というよりは、新聞社ならではのリッチコンテンツの提供という感じだけれど、)リベラルvsアンチリベラルのやりとりが含まれるなどがあるとかなりおもしろい。実現するだろうか
多様な価値観
- 若手社員と世代の差をよく感じ悩んでいる。どうすれば?
- 同じ日本人でも世代が違えば価値観は異なる。違いを受け入れよう
- 朝日新聞社は記者職が約2000人。同じニュースに対しても、思いのほかいろんな意見が集まる。この多様さが、大切だと思っている
私的「転換点」の書籍:ビジネスライティングの英語表現
- 作者: ロッシェルカップ,荻原秀介
- 出版社/メーカー: ジャパンタイムズ
- 発売日: 2004/08/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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社会人になりたてのころに見つけたカップさんの書籍。
いわゆるビジネスシーンでの(主にメール等での)英語表現を多く習得することができた。学生時代に読み書きで触れた論文英語とは、また違った視座や立場
社会人経験をある程度経た人にとって、自分の価値観や知見の「転換点」となりうる書籍は、誰にでも何冊かはあると思う。自分の場合はこの一冊がいまも当てはまる