always one step forward

プリンセス・トヨトミ

作者(万城目学さん)が世代も出身地も同じと知って観たくなった。おそらく他の人が「大阪国」を扱おうものなら、「みんな阪神ファン+普段の会話からしてボケツッコミetc.」というステレオタイプな表現にはまって共感できなかっただろう。この作品はそうではなく、大阪弁にしても、変に訛りが強くない"中性的"な扱いだったので助かった。道頓堀、たこ焼きお好み焼き、そして(キーとなる)大阪城と、映像化しやすいアイテムはさすがにたくさん出てくるものの、人間や言葉をいかに客観的に描いてくれるかで、映画やドラマの入り込み方が変わってくる。


物語の背骨になる歴史上の仮説は、かなり現実離れはしているものの、まあ合理的な方だと思う。5億円という補助金は単なる"国家"予算とすれば少なすぎで、せっかくだから何にいくら、という検査報告も少しは観たかった。予想していなかったけれど、親子、特に父と子供への大切なメッセージが後半に示される。「大阪国の国民になるためには」という条件はけっこうずしりと来た。すべての大阪人が大阪国民ではない、という理由付けにもシフトできるこの条件は、よく考えたなと思う。


鳥居元忠、旭姫、蜂須賀小六長宗我部盛親、と歴史を多少知っていれば判別できる、名前での敵/味方の区分け方もわかりやすい。映画の流れだけでは理解できない、謎な部分はいくつか残るけれど、原作をけっこうかいつまんで構成された作品のようなので、原作をじっくり読んでみようと思う。