議事録というコンテンツ
この景観問題をきっかけに知った「横浜市都市美対策審議会」の議事録がおもしろい。この地域の都市景観のあるべき姿、そこに建てられる新しい建設物の計画の是非について、横浜にかかわりの深い建築家など、実績ある識者によって「とても」具体的に議論されていることがわかる。
- 第14回横浜市都市美対策審議会景観審査部会議事録(アニヴェルセル)
録音の書き起こしだろうけれど、よく読むと、
- Aさんはこの建築計画にはどちらかというと賛成で、かつ挙げるべき論点を提示して、中立の立場を保っている
- Bさんはこの計画には反対で、ネガティブファクターをたくさん出してくる。しかし感情的ではない(実際の口調まではわからないけれど)
- 対する事業者側(この場合はアニヴェルセル)は、真摯な回答がほとんどだが、たまに質問に直接回答しない技も見せつつ、何とかこの場をやり過ごしたいとのらりくらり
- 議長(この場合は卯月部会長)は、自分の意見も言いつつ、とにかくこの部会の意見をまとめることに注力
など、参加者の視点や姿勢がわかる。
「1人1ブログ」のような時代には低迷していたメルマガビジネスが、まぐまぐなどで1-2年前から再興している。同じようにこういう議事録(官民問わず)を材料にした読み物があれば、議論の息づかいを感じられて、けっこうおもしろいコンテンツになるのではと思った。(もちろんHTMLなどでマークアップして、とにかく読みやすくすることが前提)
この結婚式場は(どんな変更がされるにせよ)これから建てられるもの。現在になるべく近い "景観状態" で新設された建築物といえば、カップヌードルミュージアム。これも見方によっては独特な建築物で、「これから建てられるとき」にどんな議論がなされたのだろうと思っていると、たまたま横浜市会議員の伊藤ひろたかさんに教えていただいた:
@masa_36 ちなみに、これがカップヌードルミュージアムの議事録です。URL
2012-03-02 07:03:48 via HootSuite to @masa_36
- 第13回 横浜市都市美対策審議会景観審査部会議事録(カップヌードルミュージアム)
審議会のメンバーはほぼ同じで、特徴的な外観などについてやはり具体的なやりとりがなされている。しかし全体としては:
‥ 今回は、模型を見ても、地域の中でそんなに違和感がなく、ボリュームや配置についてそんなに問題はないし、用途も地域の活性化のために役に立つということで、大変好感を持っている。‥
と前向きな内容を占めている。対してアニヴェルセルの場合は:
‥ 各委員のご意見をまとめますと、今目の前にあるこの模型の形では認められない、承服できない。といって、この方針で微調整をすれば認められるかということでもなしに、基本的なデザインの考え方、それは配置、外観あるいは景観、そういったデザインの基本的な考え方の大きな見直しが必要ではないかというご意見であったと思います。‥
となかなか厳しい意見。これを受けてどんな設計変更がなされるのか(あるいは特になされないのか)‥と合わせて、次の審議会でどんな議論がなされるのかもかなり興味深い。
自治体行政で催される会議ではほとんど議事録が残され、かつ情報公開の文化浸透を受けたWeb公開が当然になっていて、「○○市 議事録 公開」などで検索すれば出てくる。たとえばこの「函館市都市計画マスタープラン市民懇話会」など。話された口語をそのまま文章にしているので読みにくいが、一応、外部の人間もその内容を知ることができる。あとは、民間企業での例として:
・東京スカイツリー:10名の「新タワー名称検討委員会」による、正式名称決定前の6候補の選定
・横浜DeNAベイスターズ新マスコット「DB.スターマン」名称とデザインの決定
なども、実際の議論や決定までの経緯がわかればおもしろいのにな、と思う。